原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム(第1回会合)
●会見資料
●出席者
●録画映像
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○島﨑委員長代理
それでは、定刻になりましたので、ただいまから原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム第1回会合を開催いたします。私、担当をします島﨑でございます。本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。原子力規制委員会では、火山活動のモニタリングを行うということで、専門家の皆様に集まっていただいて御議論をしていただこうと考えております。今日は、論点等をまとめてございますけれども、まず、なかなか我々がというか、観測したことのないような事象について、これから検討をしていただくことになりますが、それについては安全側のスタンスをとると委員長は言っております。実際、審査会合において、火山活動の影響が審査対象になりまして、炉の運用期間中に活動する可能性が十分小さいと評価しても、安全神話に陥ることなく、そのことが継続的に確認されなければならないということでございまして、巨大噴火につながる可能性のあるような異常が、その後、発生する可能性も十分あると思いますので、炉の運転停止命令を含むような対応を行うケースについても考えていく必要があると思います。そのような対応に資する火山学上の最新の知見や考え方について、それを整理して、今後の対応に役立てたいということから、火山学御専門の方々、モニタリング関係の方々に来ていただいております。ぜひ忌憚のない御意見をいただいて、有効な火山活動のモニタリングの実現につなげていきたいと思います。本日の会合は、あくまでも科学技術的な観点からの審議でございますので、その点も含めてよろしくお願いいたします。それでは、議事に入る前に、検討チームのメンバーの紹介を規制庁からお願いします。
○事務局
原子力規制庁の田上です。お手元の名簿の順番で、チームメンバーを御紹介させていただきます。まず最初に、東京大学名誉教授、藤井敏嗣先生。続きまして、京都大学名誉教授、石原和広先生。次に、東京大学地震研究所の中田節也先生。続きまして、独立行政法人産業技術総合研究所、活断層・火山研究部門、首席研究員の篠原宏志先生。続きまして、独立行政法人防災科学技術研究所、観測・予測研究領域、総括主任研究員の棚田俊收先生。続きまして、オブザーバーとして、3名、御紹介いたします。国土交通省、国土地理院、地理地殻活動研究センター、地理地殻活動総括研究官の飛田幹男先生。続きまして、海上保安庁、海洋情報部、技術・国際課、火山調査官の矢島広樹先生。続きまして、気象庁、地震火山部、火山課長の北川貞之先生。続きまして、東北大学、東北アジア研究センター教授の石渡明先生。以降、原子力規制委員会委員長代理の島﨑邦彦。原子力規制庁技術総括審議官の平野雅司。原子力規制庁原子力規制部長の櫻田道夫。原子力規制部安全規制管理官(地震・津波安全対策担当)の小林勝。同じく、原子力規制部安全規制調整官の森田深。最後ですが、原子力規制庁技術基盤グループ専門職の安池由幸。以上が、チームのメンバーでございます。
○島﨑委員長代理
以上が、この検討チームの主要な構成メンバーですけれども、今後、検討内容に応じて、さらに専門家に御参画いただくことを考えております。続きまして、規制庁から配付資料の確認をお願いします。
○小林管理官
管理官の小林でございます。配付資料でございますけど、まず、資料1としまして、火山活動のモニタリングに関する検討チームにおける論点(案)でございます。それから資料の2番、3番、4番、これが、本日、委員の先生方からプレゼンしていただく資料でございます。それから参考資料1としまして、これは去る20日の日の規制委員会の検討チームの設置についてのペーパー、それから参考資料2、3、これが降下火砕物への対応ということで、まず参考資料2が、原子力規制庁のほうの審査書案の抜粋、それから資料3が、九州電力のほうの説明資料の抜粋でございます。配付資料については、以上でございます。
○島﨑委員長代理
資料に不備などありましたら、規制庁へお申しつけください。それでは、議事に入らせていただきます。まず、原子力規制庁から、本会合の趣旨を説明するとともに、この検討チームにおける論点案を説明していただきます。
○小林管理官
規制庁管理官の小林でございます。まず、参考資料1を御覧いただきたいと思います。参考資料1ということで、「資料4」というのが書いてございますけど、これが、去る8月20日に規制委員会の中で、この本日の会合の設置を決めた際のペーパーでございます。検討チームについて案でございます。1ポツの趣旨のところでございますけど、概ね先ほど島﨑委員のほうから、冒頭、挨拶をしていただいたような趣旨が書いてございます。特に、「一方、」以降のところ、「原子力規制委員会としても、申請者が行うモニタリングによって、巨大噴火の可能性に繋がる異常が検知された場合に、運転停止命令を含む対応を行うことが必要なケースも考えられる」ということで、「このため、規制委員会としての対応に資する火山学上の知見や考え方を整理するため、検討チームを設けることとする」ということとしてございます。それから、検討の進め方でございますけど、主だったところだけ紹介しますと、③必要に応じて、規制委員会に検討状況を報告するということと、④検討の過程において、事業者から、意見を聴取する場合があるということでございます。それから、今後のスケジュールでございますけど、本日、第1回ということで、検討チーム設置の趣旨、それから、基本的考え方の整理について行いたいと思います。それから、第2回が9月2日の火曜日でございます。基本的考え方をまとめたいと思っております。それから、第3回以降でございますけど、これは少し中長期的な検討でございまして、対応に資する火山学上の知見や考え方の整理ということで、例えば判断の目安などを議論していただこうと考えてございます。裏面が、検討チームのメンバー表でございます。それから、もう一つ、資料1というのがございます。1枚ものでございます。ここでは、まず検討チームにおける論点(案)というのを、私ども、規制庁のほうから提示させていただいてございます。冒頭のところに書いてございますように、規制委員会としては、運用期間中にカルデラ噴火に至るような状況ではないと判断していますけど、事業者が行うモニタリングによって万が一異常な状況が認められた場合には、規制委員会として安全側に判断するというスタンスに関し、基本的にどういう考え方で進めたら良いかということについて、火山学上の知見を踏まえた御意見をお聞きしたいと。また、火山学の現状として分かること、それから不足していることやモニタリングの方法が適切であるかなどについて、御教示いただき、これを整理しておきたいという趣旨でございます。それから、具体的な論点でございますけど、以下のとおりということで、まず(1)モニタリングに対するスタンスと有意な変化の捉え方ということで、繰り返しになりますけど、規制委員会としては、安全側に判断して、炉の停止を求めるなどの対応を行うこととしてございますけど、巨大噴火の時期や規模を予測することは困難であるとの考え方もある中で、規制行政上の対応を行うかどうかの判断に資するためには、どのように有意な変化を捉えていくかの検討が必要ではないかということ。それから、(2)としまして、現状のモニタリング方法の適切性と精度の向上ということで、現状のモニタリング方法が適切に行われているか、それから、追加すべきモニタリング項目・方法はあるか、さらに、早期の変化を精度良く捉えるために、モニタリング手法(方法、観測点の配置、解析等)を如何にしてより良くしていくかという検討が必要ではないかということ。それから、(3)としまして、火山学上の知見の整理。巨大噴火に関連した火山活動については、幾つかの報告例もあるので、それらの知見を可能な範囲で収集・整理するとともに、これまでの観測経験も含めて今後の議論に生かすべきではないか。このような観点で、この会合の議論を進めていったらどうかという提案でございます。私からは以上でございます。
○島﨑委員長代理
ただいまの説明について、何か御質問、御意見等ございましたらお願いします。よろしければ、資料を見せていただくことに進みたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。用意されている資料、先生方に用意していただいていますけれども、すみません、今、準備に手間取っておりまして、石原先生の資料から、すみません、ちょっと順番があれですけれども、よろしいですか。よろしくお願いします、御説明。
○石原名誉教授
火山のモニタリングということについて、基本的な考え方をお話ししたいと思います。原子力規制委員会の火山影響評価ガイド、非常に立派なものができておりますけれども、それを拝見したり、関係者の巨大噴火に関してのいろんな御発言を聞きますと、どうも火山学のレベル、水準をえらく高く評価しておられると、過大に。地震学に比べれば、随分と遅れていると思うんですが、そういう点。それから、もう一つは、やはり、いわば原発であれば、人間がつくり、装置をそれなりに監視しているわけですね、たかだか40年。それに対して火山活動というのは、御存知のように、巨大噴火というのは数千年、数万年のスケールで起こるわけでありまして、そういうプロセスで考えた場合に、どうもそういう観点でのモニタリングというのとはどうも違うように思います。そういう意味で、少し火山のモニタリング、その効果、それから体制、そして、巨大噴火の事例等について、問題提起といいますか、御紹介したいと思います。モニタリングですけども、モニタというと、いわばデータ、パソコンとか、テレビ画面で、モニタ画面で見るかのように、異常を識別するというふうになっていますけども、本来から言えば、そうではなくて、やはりある期間の相手の現象の動きを――そこには書いてありますけども――見て、監視して、それからチェックして、それがどういうふうに発展するかという、それが本来のモニタリングでありまして、しかも、そういう変化を見ることによって、何らかのことが起こるときには必要な対策がとれると、そういうふうな意味だろうというふうに思います。そういう観点で御説明したいと思います。火山のモニタリングですが、ここには日本における1880年代からの火山噴火の犠牲者の数を示しております。見ていただくとわかりますけども、1960年半ばから、ちょっと犠牲者の出る頻度が減っています。これはどういうことかということで、結局、気象庁が火山情報の発表、いわゆる我が国における火山モニタリングの始まりをやったのが1965年なんですね。やはりそれなりの効果が出ているということです。それの約10年後に、1974年に火山噴火予知計画が始まって、火山噴火予知連絡会ができたということで、日本が一応いろんな機関が関係して取り組むということがあったわけです。その後、1991年、御存知のように、雲仙普賢岳で、予知連絡会が頻繁に火砕流に対する警戒を呼びかけるけども、事故が起きたということであります。結局、それは何か、危険範囲という、単なる予測じゃなくて、危険範囲で述べるということで、1992年、翌年ですけども、いわゆるハザードマップをつくる。そういう指針ができたということになります。それから約20年の間は、一応火山噴火に関する災害というのは、犠牲者が出ずに済んでいるというわけであります。いよいよ気象庁は、実用的な噴火予知ということで、火山噴火予警報を開始したということになりますし、ようやく20火山から47火山への監視対象を増やしたということになります。火山のモニタリングに関連して、火山噴火予知というのはどんなふうに考えているかということ、研究者がどう考えているかということを地震との対比で示しております。地震予知については、学会のホームページとかを見ますと、地震の発生時間の予測、場所、それから、大きさを起きる前に判断することができることを「地震予知」というふうに言っておられますし、それよりも、確度の下がったものを「予測」というふうに言われております。一方、火山のほうは、そういうふうなのと全く違った考え方でやっています。「火山噴火予知」の最大の目的は、その発生を予知し、危険区域外に避難することによって、人的被害を最小限に食い止める。それから、そのためには、「いつ」、時間ですね。「どこから」、場所、「どのような」、これは様式です。「どれくらいの激しい」噴火が発生するかを予測することが必要であるということでありますし、火山の場合は、一旦始まった後に、また大きなことが起きる場合もあるわけでありまして、「いつまで」続くかを予測することが必要であるというふうな認識をしているわけです。ここで言うと、「どのような」というのは、例えばどういうことかといいますと、富士山を例に挙げますと、御存知のように、平安時代の貞観の噴火、これはいわゆる青木ヶ原の溶岩流を出したところですね。それが北方面に決定的な被害を及ぼす。それから、今現在の富士五湖、そういう地形変化を及ぼすわけです。しかし、限定的である。しかしながら、同じように、約1km3のマグマを出しても、江戸時代の宝永の噴火のように、火山灰、軽石等出しますと、薄く広くといいますか、災害を引き起こす。御存知のように、富士山の噴火、宝永の噴火の後に、神奈川県で繰り返し泥流が起きていますけども、そんなことで、「どのような」ということは様式も予測が大切ですし、活動が一旦始まると、あとどうなるか。最近で言いますと、2000年の三宅島の噴火ですね。何千年ぶりのカルデラができる。カルデラが陥没する。その後、大量の火山ガスが噴出するというようなことで、火山噴火予知というのは結構難しい、難儀な問題であります。ということで、火山噴火予知というのは、あらかじめ火山の危険性を知らせ、噴火の危険性を知らせ、被災を防ぐ行動を促す社会的な行為というふうな認識を研究者としても示しております。それの実際的なものとして、気象庁は、先ほど言いましたように、2007年に「噴火予警報」を開始しましたし、ハザードマップとか、それぞれの協議会と、地域の火山についての協議会ができているところについては、約30火山ですけど、定量的な表現を付加した、つまり、5段階の「噴火警戒レベル」、「平常」から「避難」までですけども、そういうものをやっているということでございます。日本のいわゆる火山のモニタリング、まともにやった歴史というのは、1965年から約40年ですけども、インドネシアの場合は、1920年代から約90年の歴史があります。そこで、どんなふうにやっているか。モニタリングの体制、火山の噴火にどう対処するかというものを示しています。インドネシアの場合は、昔の火山調査では、現在は火山学・地質災害軽減センターと言っていますけども、最大の任務は、火山噴火による犠牲者及び物的損失を最小限に食い止めると、そういう認識であります。その中で、三つの要素でもって、大まかに言いますと、態勢を組んでいるということで、一つは、監視するという意味で、現地にそれぞれ観測所を置いて、24時間の体制で行っているということです。それから、いざ噴火が起きた場合に、どんな災害が起こるか、どの範囲に及ぶかという、いわゆるハザードマップ、影響評価を行っております。そこには泥流とか、噴火の後の影響まで考慮していると。それと、実際にそういう事態が切迫したときに、火山活動を評価し、警報を発表するというシステムになっています。噴火、火山警戒レベルというのは、レベル1の平常から避難まで、4段階でもって、社会に対して情報を発信するということです。日本の気象庁とちょっと違うのは、現地に観測所があるかどうかを含めてですけども、もう一つは、段階に応じて、本庁から専門家を派遣する。さらに、部長級の専門家と機動観測班を現地へ派遣する。さらに、避難が必要になる段階では、センター長、この組織の最高責任者が現地に駐在するということで対応するということであります。つまり、社会に単に警報を発するだけではなくて、火山活動の状況変化に応じて迅速・的確に対応すると、そういうふうな態勢をとっているということでありまして、原発についてどうなのかということになりますけど、やはりこれに準じたような、いわば異常を判断する基準だけではなくて、そういう体制が必要ではないのだろうかというふうに思います。火山モニタリングの実例ということになります。噴火警戒レベルを開始して、最初の本格的な噴火というのは2011年1月26日、3.11の一月ちょっと前ですけども、その噴火ですね。この噴火に対しては、地震学者の方々から、「噴火が始まってから警戒レベルを上げた新燃岳の噴火予知は失敗ではないか」と。地震関係の有力なリーダーの方から何人か言われました。私が何で言われるのか、よくわからないですけども、そこで、ここに時系列を書いておりますけども、1年半前に小噴火があって、5月6日ですけども、気象庁が警戒レベルを1から2に上げて、1km以内を立入禁止にしています。それから、その後、7月も起こっていますけども、7月に小噴火が起こった後、約半年間、このレベルを維持します。そして、1月19日に小噴火が始まる。それから、1月26日に朝からごく小規模な噴火、それから噴火が拡大、噴煙が数千m上がった段階で、ようやく2から3へ上げたと。2kmにしたわけですね。これは何かというと、本格的なマグマの噴火の明瞭な証拠が、地震観測、あるいはテレビのモニタでは識別できなかったということです。ちょっと疑問なんですけども、結果的に地震学者の方が言われるように、予知に失敗しているわけです。しかしながら、前年5月からのレベル2を維持して、霧島市等、地元の自治体は登山規制を堅持していたと。その結果、人命が失われる事態は避けられたということになります。つまり、噴火警報は「人身の安全確保」を目的とした情報でありまして、地震学者が言うような「予知」ではないということです。先ほど言いましたことと同じですけども、そういうことであります。ただ、個々に見ますと、非常に問題なのは、地震計、地下傾斜計とか、あるいはGPSのことの計器ばっかり頼りにしている。実際には1週間前から、ここに書いてある19日以降、22日も噴煙が出ています。その後、26日になっては、朝からいろいろな変化を起こしていまして、そういう経過を見れば、本格的な噴火が起きるものだというふうに想定、こんな言うと生意気ですが、私であると想定するんですけども、そうでもない。つまり気象庁、あるいは福岡のそういうところでのモニタだけでは、パソコンとか、テレビのモニタだけでは、それはなかなか難しいですよということを申し上げたいと思います。規制委員会のこのガイド等でも、いろんなことと関連して、GPS、GNSSが有効ということ。確かに「噴火ポテンシャル」、どれだけの規模の噴火、マグマをためているかということに対しては、GPSは非常に有効であります。ここに、見ていただきますと、約1年前から、といっても、これを見ていただくとわかりますが、20数kmの測線が1~2cm、2cm、3cmの変化なんですね。3.11の地震の後には、いろんなところで、このぐらいのスケールのところで何十cm動いていますけど、その規模は極めて小さいわけであります。ということで、非常に小さいわけでありまして、噴火の兆候が大きい、あるいはGPSと地震観測、監視カメラで噴火予知はできるというのは、これは思い込み、俗説・誤解であります。噴火予知には、それ以外に、現場での目、耳、鼻を生かした、そういうふうな諸現象の調査・観測、それから、それぞれの火山の特性と活動の展開に応じた追加観測・調査が不可欠であるというふうに考えております。それと、噴火の前に地面が隆起するとかいうのは、多くの場合はそうなんですが、そうでない場合が多いわけですね。有珠山の場合は2000年の噴火ですけども、噴火開始と同時に地殻変動が始まる。そういう例もあるわけでありまして、噴火ポテンシャル、どれだけのマグマを蓄積しているか、噴火の兆候があるかというのは、ガイドにも書いてありますけども、噴出物の「階段ダイアグラム」、あるいは書いてありますように、「経年的な地震活動」の増加等も考慮する必要があるわけであります。有珠山の場合は、その地震活動が年に数十回から百数十回というふうに、前の噴火から、77年の噴火から増えているわけでありまして、幾つかの指標でもって評価する必要があるだろうというふうに考えます。大噴火・巨大噴火の観測例、あるいは、それの記述というのは非常に例が少ないわけでありますけども、ぱっと思いついたところで紹介いたしますと、一つ、VEI――火山爆発指数ですけども、6から上、6、7が巨大噴火、それから4~5が大規模噴火、大噴火、それから下が中小噴火となります。ピナツボ噴火というのが20世紀最大の噴火でありまして、1991年6月12日に発生していますけども、その約2カ月前に地震活動、その前に水蒸気爆発が起こっているわけだけど、そういうふうなことを経て、噴火の2週間前からは地震、噴火活動が活発化する。あと、10日前、1週間前には、深いところで低周波の微動が発生すると。それをマグマの貫入という考え方もあるんですけども、それでもって起こっているわけです。ここについては米軍のクラーク基地がありまして、USGSが噴火が始まったということで、4月の後半に現地に入り、過去の噴火の歴史を調査し、モニタリングを交代でやっていたということで、結果的には大きな被害にはなっていないと。人的被害は200名とかいうようなことですけども、それで済んでいるということになります。それから、セントへレンズの噴火、これについても、やはり前兆的な噴火、それから地震活動というのは約2カ月前から始まっている。北斜面でもって顕著な膨張が始まって、一月前ですけども、主噴火と同時にその部分が崩落するというようなことが起きています。桜島の大正噴火の場合は、ちょっと様子が違いますけども、その前に、噴火の数十年前から地盤がゆっくりと隆起するというようなことが、当時で言いますと、鹿児島湾の周辺の河川で、大潮になりますと、満潮になりますと、海水が遡っていくわけですけども、その遡上範囲が次第に短縮する。奥まで入らなくなるというようなことから、後になってですけども、そういうことが起きたことは確かなんですが、実際の噴火というのは、わずか32時間の地震でもって起きたということになります。それから、ラバウル、これはまた1994年ですけども、これは20数年前、後でお話ししますけども、かなり大きな地震が起きていますけども、最後はわずか30時間足らずの有感地震でもって、大きな噴火が起こっているわけです。雲仙普賢岳の例も出しておりますけども、何らかの地震、水蒸気爆発なり、そういう兆候はあったということであります。あと、19世紀には、大きな巨大噴火が二つ起こっています。インドネシアのタンボラ火山、それからクラカタウですね。それぞれ、当時のいろんな資料を見ますと、噴火の2年前、あるいは100日前に前駆噴火が始まったというふうにされております。そういうことでありまして、巨大噴火は何らかの前駆現象が数カ月、あるいは数年前に発生する可能性が高いわけであります。ただ、そういう前駆現象が出たからといって、前駆現象というのは何らの異変が起こったからといって、巨大噴火になるとは限らない。したがいまして、顕著な地変、中小噴火が始まった時に、巨大噴火を想定した態勢、あるいは対策というのが迅速にとれるかどうかというのが決め手になると思います。いろんなことで、巨大噴火が起きる10年、20年前にわかるというような発言もお聞きしますけども、実際にはそう単純ではない。ラバウルの例を言いますと、1994年9月19日に噴火が起きておりますけども、先ほど言いましたように、1960年代から地震が増える。1970年代から大きく地盤が隆起する。1983年~1984年にかけては約1年で1mも地盤が上がる。地震回数が4,000~1万数千回、つまり、一月当たりですから、1日何百回と、100回というようなことで、つまり、1時間に10回近い地震が起こるという大変な事態がわかります。ところが、噴火が起きずにそれは終わってしまったと。で、それから10年後になって、静かな期間が、活動が低下したところに突然に有感地震が始まって、1日あまりでもって噴火に至ったという例がございます。したがって、顕著な異変が、地変が起きた、おさまった、大丈夫かといっても、その後、巨大噴火というのは、大きな噴火が起こり得るわけでありまして、その間、その先まで、そういうふうな巨大噴火を想定したような態勢・対策が保持できるか、維持できるか、これもまた大事な現実的な問題だろうと思います。今、九州電力の問題に関連しますと、桜島・姶良カルデラのことが話題になっているわけですけども、歴史時代の活動がどんなふうに、巨大噴火に行きませんね。大噴火ですね、1km3のオーダー。どうなっているかというのを1250年前から、ここに大きく三つの噴火がありますけど、そのことを書いてあります。1250年前といったら大変昔みたいに思いますけども、この天平宝字の噴火の11年前に、唐招提寺を建立した中国の鑑真和尚が薩摩半島の坊津に着いているわけです。そう遠い昔ではありません。それから起きて、約700年後に文明の噴火、それから300年あまりで安永の噴火、そして、130年あまりで大正噴火と。現在、100年ということになっています。見ていただくように、巨大噴火、大噴火の発生間隔は短縮しているわけでありまして、それに対して、解釈は二つあるかと思います。一つは、この間に地下のマグマの供給率が次第に増加したという考え方、もう一つは、マグマ蓄積量が、マグマ溜まりの容積、キャパシティの限界に近づいてきているんだという、二つの考え方があるかと思います。九州電力の資料を見ますと、先ほど言いました、1、2の解釈の2番目の解釈に至ったような図を示しておられます。これは右側が桜島の地下のイメージでございますけれども、姶良カルデラの下に、年間約1,000万m3、km3で言いますと0.01ですね、たまって噴火を過去に繰り返したということで、左側の図ですけれども、最近100年の水準測量から見た地盤の変動と地殻変動と噴火の関係、それをずっと遡っていきますと、つまり、過去の噴火の噴出物、量に応じてでこぼこさせるわけですけども、そうしますと、その底の部分がだんだんと上がってくる。つまり、たまったマグマをそのまま出しているようなこと、幾らか残っているというようなこともあります。九州電力のほうの見積もりでは、ここに書いてあります、この隆起、年間に0.13cmということを0.0016、つまり、160万m3/年というふうになっておりますけど、その経年変化を過去に遡っていきます。姶良カルデラの噴火は、2万9000年後の一番大きかった1万3000年前の噴火まで遡りますと20km3、それから、姶良カルデラの大噴火からこういうことが起こったとすると46km3、つまり、20~50、大まかに言いますと、数十km3のマグマが地下にたまっているというふうなことに、解釈になるんだろうと思います。そして、いわばそういう中で、いろんな方が言われるのを見ておりますと、玄武岩質マグマが急激に入ってくると、数カ月あるいは数年で巨大噴火発生に至るというふうなことであります。これは九州電力のいろんな評価を見ますと、想定されるのが1万3000年前の噴火クラスを想定しておりますけども、そういう想定は、大まかなところとしては妥当なものかなというふうな印象を持ちます。最後の図をお願いします。今後の課題、モニタリングに関連してですけども、カルデラ域の火山活動のモニタリングになりますと、これは幾つか、非常に欠けていることがあります。下に姶良カルデラ(桜島・若尊)というところ、それから鬼界カルデラ(薩摩硫黄島)、それから十和田という、三つの例を出していますけども、ここでは、現在、気象庁の観測等によりますと、10kmより浅い部分で地震が頻発しています。つまり、まだ生きているということですね。ただ、多くのカルデラが海水、湖水に覆われているために、地震のメカニズムや湖底・海底の様子というのは、今、モニタできておりません。カルデラの巨大噴火を評価するには、海域、そういうところを含めた火山のモニタリングが不可欠だろうと思います。御存知だろうと思いますけども、約7,000年前ですか、真ん中の図、鬼界カルデラ、ここでは巨大噴火が起きているわけですね。しかしながら、ここは海域であるために、地震の数は少なくなっていますけども、実際には、ここに書いていますように、括弧内に書いておりますように、1934年には海底噴火が起きまして、地震が起きて、あっという間に海底噴火に至り、2週間で、その後、3カ月で新島ができております。このときの産総研の見積もりで見ますと0.27、約0.3km3で、VEIは4というふうに推定していますけども、この量は雲仙普賢岳の約1.5倍の量でありまして、しかも短期間に出したというその10倍、はるかに雲仙普賢岳よりも非常に勢いよく出したということで、いわば地下にそれなりのマグマがたまっているというふうに考えざるを得ないのではないだろうかと。これは妥当かどうかはまだ今後の検証ですけども、つまり、この場合ですと、1983年のインドネシアのクラカタウの火山の噴火、大きな津波で数万人が亡くなっていますけど、想定としては、そのぐらいの想定をしなきゃいけないのではないかと。これは万が一ということを考えるならばと、そんなふうに思っているところです。少し長くなりましたけども、以上でございます。
○島﨑委員長代理
どうもありがとうございました。御質問等あるかと思いますが、すみません、事務局のほう、準備はどういう状況なんですか。特に、今すぐということでなければ、幾つか、御発表の後でまとめてということでもよろしければ、次へ進ませていただきます。次は、藤井先生でよろしいですか。
○藤井名誉教授
私は、島﨑委員のほうから、T.DruittがNatureに書いた論文について、少し解説をしてほしいということでしたので、そのお話をいたします。実は、紙のペーパーで見ていただくことを想定していましたので、文字と図とがページがずれておりますが、できるだけ簡潔にお話ししたいと思います。この論文について、解説する理由は幾つかあります。一つは、この論文に基づいて、巨大噴火の可能性が十分に低いと判定するための根拠の一つとされたからであります。それから、もう一つは、モニタリングによって巨大噴火を知ることができるということの根拠の一つにされたのがこの論文であります。それから、異常の発現から巨大噴火に至るまでの期間として、数十年もしくは100年あるので、安全に廃棄物を移動できる期間があると。その予知まで、予知をしてから噴火に至るまでの期間に余裕があるということの根拠に使われたのもこの論文であります。ですから、この論文は、今回、規制庁もしくは九電側が、巨大噴火を判定する、あるいはモニタリングの基盤にするときに使用した非常に重要な論文でありますので、それについて御説明をします。ただ、これは岩石学の非常に専門的な論文でありますので、できるだけかいつまんでお話しします。この論文で取り扱ったのは、今から3500年前、紀元前17世紀にサントリーニ火山――今はギリシア領になっていますが――サントリーニ火山で40km3ないし60km3のマグマを噴出したカルデラ噴火、通常はミノア噴火と呼ばれておりますが、その噴出物の中に含まれる斜長石という白い結晶ですね。どこにでも大抵の火山岩の中には含まれている斜長石の斑晶を解析して、その中に含まれている非常に微量な成分でありますが、マグネシウム、チタン、ストロンチウムという、これはそれぞれ、斜長石の中で拡散速度が違う元素でありますが、この元素の分布の解析から、その斜長石が晶出して、その後の熱履歴を固定しているという前提から解析をし、それに基づいて、カルデラ噴火に至るマグマ溜まりでのプロセスを解釈した論文であります。その主な結論は、ここで黄色い枠の中に書いてあります。このミノア噴火のマグマ溜まりは、噴火に先立って、これはいつからできたかということは一切書いておりませんが、数kmの深さに流紋岩質というシリカに非常に富んだ、通常は粘性の高いマグマだと思われていますが、流紋岩マグマが存在していたと。そこへ噴火に先立つ100年ぐらい前、数十年~100年ぐらい前に、玄武岩、地下深いところで、この深さについても、この論文では言明しておりませんけれども、深いところで玄武岩質安山岩というマグマが、地下にあったデイサイトマグマに注入をします。それがきっかけとなって、デイサイトマグマが浅いところに移動をしてくる。そして、そのもともとあった数kmの深さの流紋岩マグマの近くにやって来るという現象があった。100年前に予知ができるとか、予知をしたというふうに、いろんな場所で言われている100年というのは、この数値のことを指すものと思われます。それから、そのデイサイトと呼ばれるマグマ、深いところから上がってきたデイサイトと、数kmの深さにあった流紋岩マグマが混合を始めるのが、噴火の10年前です。約10年ぐらい前から断続的に混合を始めます。デイサイトマグマが流紋岩マグマの中に入っては、その中で混合して組成を少しずつ変えていく。約10年間ぐらい、断続的に噴火の直前まで、その2種類のマグマの混合が行われて、噴火に至ったのであるという結論であります。そのデイサイトマグマがどのくらい深いところから上がってきた、デイサイトマグマの量はどのくらいであったかというと、最終的に混ざって噴出したマグマと、それから、推定したデイサイトマグマの化学組成から、深いところから上がって混合したマグマは数km、彼らは数というのを5~6だと思っているようですが、5ないし10km3のマグマが100年ほど前に上がってきたと。もともとあった流紋岩マグマは、35もしくは50km3であると。これはレンジを書いているのは、ボリュームの推定が、全体として噴火によって放出されたのが40ないし60という、これぐらいの誤差を持つものですから、こういう見積もりになります。このことは約100年間で数km3~10km3のマグマが付加されたことになるので、マグマの供給率は、年間で言うと0.05~0.1km3になると。これがモニタリングの一つの根拠に使われている数値であります。0.05km3よりも大きいので、それは十分に把握できて、これを把握した途端に巨大噴火が100年後に、あるいは数十年後に起こる可能性があるという16ふうに理解をされたようであります。その下に書いてあるのは、実は非常に細かいことを書いてありまして、なぜこういう結論に至ったかということを書いていますが、これはあまり詳しく説明をしてもわかりにくいと思いますので、まず、次の図を出していただきましょうか。左上に描いてある図1ですね。これは先ほど申し上げた、斜長石という結晶を幾つかのタイプに分類をしました。それで、type1とtype2に大きく分けていますが、type1というのは、デイサイトマグマと、それから流紋岩マグマが混ざってできた、デイサイトマグマから晶出した斜長石がここのオレンジ色の部分、赤い部分は、一番最初にトリガーになった玄武岩質安山岩から晶出した斜長石、外側に黄色いもので囲まれていますが、これはデイサイトマグマと流紋岩マグマが混合した後の流紋岩質デイサイトというマグマから晶出した、噴火の前に晶出した部分をこの黄色で表しています。重要なことは、そこのtype1という、四つあるうちの右下のところに黄色い枠を持っていないものがありますが、これはデイサイトから晶出して、ほとんど混合した際に時間がなく、そのまま噴火に至ったということで、直前までマグマ混合が起こっていたことの証拠として使われているものであります。それから、type2というのは、これは流紋岩マグマから晶出した緑色の斜長石が、高温のマグマに取り込まれて、一旦融蝕をしますけれども、溶けるんですが、溶け残ったものの周りに混ざってできた流紋岩デイサイトから晶出した黄色い斜長石がくっついたものと。こういう二つのタイプに分けて、これらを解析をしたわけです。主に解析したのはこのtype1というものでありまして、これがデイサイトから晶出して以降、どのくらい時間が経ったかということを、拡散速度の違うマグネシウムあるいはチタン、ストロンチウムを使って、その時間経過を推定したというもので、基本的には、その図2の2-step modelというものに基づいて、彼らは計算をしております。実際上の結晶というのは、最初、デイサイトマグマの中で、左側の図2の(b)の左側の中に赤いものがあって、その周辺にオレンジ色の部分がありますが、これがデイサイトマグマの中で滞在した時間を表します。それから、黄色いものがついているところに描いてあるのは、黄色い混合したマグマの中に入ってからの経過時間を読むことができる。これは具体的にどうしたかというと、それぞれの斜長石と平衡にあったと思われるメルト、マグマの組成を推定します。それが、その下の右肩上がりのブルーの線で、枠に薄い水色が描いてあるものですが、これがもともと晶出したときの斜長石の中のマグネシウムの量であったのが、今、測定してみると、その下の丸い点がぽつぽつありますが、こういう測定点になっている。これを上に書いたような時間で、2段階で加熱してやると赤い線のようになるので、この斜長石が持つ熱履歴は、上に書いた70年デイサイトの中にいて、12年間流紋岩質デイサイトの中にいた期間であるというふうに推定をしているわけですね。それで、ここの黄色いところに描いておりますが、デイサイトと流紋岩質の混合が、噴火10年ほど前から断続的に行われ、という証拠になったのが、3枚目のほうに、図の4のほうに、これの上のほうの図4を見ていただきますと、先ほど説明したように、初生の斜長石の中のマグネシウムのコンテントがブルーで描いていて、ある想定をした期間、加熱してやると、その赤いものと黒い測定点が一致するという、その期間が、それぞれの枠の中に「70y at 900℃ plus 12y at 855℃」と書いてあります。855℃というのが混合したマグマの温度でありますが、その中に12年間いた。それから、その次の粒子に関しては、粒に関しては、900℃の状態に0.6年いた後、855℃に0.3年いたと。ここに五つの分析点がありますが、彼らが分析をした斜長石の結晶は全てこの5粒であります。5粒を分析して、先ほどのような結論を出したわけですね。最終的なモデルというのが図5であります。100年程度の間に既存の流紋岩マグマ、数kmの深さにあった流紋岩マグマ、それは35ないし50km3あったと考えられますが、それにデイサイトマグマが、数km3~10km3のデイサイトマグマがつけ加わったということで、1年当たりのマグマ供給量で言えば、0.05~0.1km3になるということであります。これが彼らの主要な結論なんですね。それで、モニタリングに関わることに関して彼らも議論をしておりますが、ここに二つ挙げました。数kmの深さにあるマグマに数km3~10km3のマグマが100年間で付加されるとすると、地表では数十mの隆起、年間で1m近くの上昇があるはずであると。しかし、このような例というのは今まで知られていないので、あまりに大き過ぎる。したがって、マグマの蓄積が行われるのは、必ずしも地表が膨らむというわけではなくて、マグマ溜まりが下側に沈むといいますか、底が沈むことによってボリュームを稼ぐことができて、地表には現れないかもしれないという議論をこの論文の中でしております。その黄色のところにつけたことが私のコメントでありますけれども、Druittのこの論文は、3500年前のサントリーニ火山のミノア噴火では準備過程の最終段階の100年間に数~10km3のマグマ供給があったということを述べただけで、カルデラ一般について述べたものではない。これは本人にも確認をしましたけれども、これ、一般則を自分は述べたつもりはないというふうに言っています。それから、マグマ供給に見合うだけの隆起が起こるとは限りません。これは彼らが議論しているとおりです。それから、特に地溝帯のようなところでマグマ供給があるときには、既に全体として広がるようなところ、むしろ沈降気味のところにマグマは貫入するわけですから、地表に隆起として、たとえマグマ貫入があったとしても、隆起として現れない可能性もあります。それから、彼らの岩石学的な議論という点から言えば、マグマの中の水の量がどうであったかというようなことを議論しておりませんので、彼らがいろんなことの根拠に使った元素の分配、マグネシウムやストロンチウムやチタンの元素分配というのは、これは水の量によって大きく変化をしますので、その辺りの評価が困難であります。ですから、場合によっては、これはもう少し変わる可能性があります。それから、このDruittの論文がよく使われることの理由として、2012年に公表されたわけですが、その後、反論がないので、これが正しいというふうに評価をされることがありますが、地球科学の論文の中では、これは生物学だとか、分子生物学と違って、追試をするということは普通は行われません。ですから、2年前に発表になった論文が、今、否定されていないから、これは正しいという根拠はあり得ないんですね。例えば箱根火山というのは、1950年代に非常にすぐれた論文が出ましたけれども、それを塗り替えるような論文が出たのは今世紀に入ってからです。それから、富士火山の岩石学的な研究に対して、それを塗り替える結果が出たのも、やはり今世紀に入ってからですから、反論がないから正しいということにはならない。これはあくまでも一つのカルデラ噴火でこういうことが見つかったので、今後、ほかのカルデラ噴火で、これが一般化できるかどうかという研究が行われた上でやるべきものであって、しかも、これがモニタリングで巨大噴火を検知できるとする、あるいは数十年前からできるという、これが全ての例に当てはまらない可能性があることを示していると思いますので、これにだけ頼るのは非常に危険だというふうに思います。以上です。
○島﨑委員長代理
ありがとうございます。次は、棚田先生、すみません、お願いします。
○棚田総括主任研究員
防災科学技術研究所の棚田でございます。今、お二人の先生よりは、もうちょっとテクニカルな話でさせていただこうと考えます。防災科学技術研究所は、110の活火山に対して火山で、基盤的観測網ということでV-netというのをつくっております。それ以外にも、日本列島全域でHi-net、これは高感度の地震計です。それからF-net、広帯域の地震計、強震観測のK-NET/KiK-netというものを観測維持しております。そういう観点から見ますと、今の防災科研の観測網全体をとりましても、最初に書きましたが、現状の火山及び地震観測網だけで、観測点の脆弱性、後で言います分布の偏りから見て、とても巨大噴火をモニタリングしたり評価するのは難しいと考えています。そのために、巨大噴火に対する切迫性、兆候を観測するためのモニタリングと評価するシステムを検討することは賛成いたしますということです。しかし、火山災害には、先ほど石原先生が言いましたような、巨大地震災害とは異なった面がありますので、以下にデータの品質、それからデータの評価について、考え方を示させていただきました。データの品質、これは評価を行うための品質ということです。これは(1)~(7)ぐらいまであるんですが、観測点数は一体幾ら要るんだというところが最初に頭に浮かびました。例えば直径20kmのカルデラができるならば、カルデラ内とその周辺域にはやっぱり50点規模にはなるんじゃないかと。ちなみに、Hi-netは約20~25kmの火山観測、V-netは1火山にいわゆる複数点、観測点間隔は約2km~5km程度であると。非常に今の現状では、とても何かカルデラというものに対して観測点の分布とはなっていないと。それから、次に(2)で、観測の種類というのが考えられます。原子力発電所の火山影響評価ガイドに記載されておりますので、それ以外と考えれば、地震活動の中に入るのかもしれませんが、強震観測、これは要る道具だろうと。というのは、ほとんどの地震計が短周期の高感度のものでやっております。つまり、マグニチュード0~1という地震のための観測網が多いです。ただ、大きな地震、マグニチュード3クラスになりますと、それらは振り切れて記録が見えなくなります。それから、大きな微動、群発地震など立て続けに起こるような地震活動になりますと、高感度の地震計では何を見ているかわからなくなると。そういう意味では、強震観測というのが要るでしょうと。次に、リモートセンシングの記載がありました。ほとんど点観測の話ですので、やはり面的な地殻変動観測、それから熱的な分布を知るということが必要かと思います。三つ目に、水準測量、これ、GPSという地殻変動の中に入るのかもしれませんが、過去のデータ、姶良カルデラみたいなものを見ると、水準測量を見るというのは非常に重要であるということで、水準測量というのを入れました。(3)海域におけるモニタリングの方法、これは石原先生と同じ意見です。カルデラが海域にある場合、ほとんど陸の観測ではマグニチュードの小さいな地震はわからないです。そのためには、これ、S-netというのは海底地震津波観測網なんですけど、や、海底地殻変動の観測もしくは海底トンネルなどをつくるなどぐらいにしないと、海域の観測というのは非常に精度が、品質が落ちるんではないかと考えております。(4)番目では、これは当たり前かと思われていますが、リアルタイム観測です。リアルタイム観測に適した観測とそうでないものがあります。防災科研がやっている地震計、地殻変動関係は、どちらかというと、リアルタイムに適しています。もちろんリモートセンシングとか、そうでないものもありますが、できると。ただ、地球化学的なものとなると、これはなかなかリアルタイムで観測していないと。物事が起きる前ならば、人が取りに行ってデータを回収すればいいんですけど、物事が起きていた場合に、人が立ち寄れないということが考えられれば、やはりリアルタイムで観測できなきゃならないだろうと思います。それから、火山観測の難しさは、噴火した場合、ほとんどの観測点のデータが来なくなります。理由は、一つは噴石等で直撃を受けて壊れるということも考えられますが、次に、電源と通信ラインが切れてしまう。ソーラーパネルという方法がありますが、火山灰が被って発電できなくなる。衛星通信があるじゃないかというが、降灰とかで全然データが通じなくなるということを考えれば、地下埋設などをするような、通信ラインと電源の供給を強靱化しなければ、とても時々刻々と起こっていくときにデータの品質を維持できないだろうと。(5)番目、長期のというのは、どこまで長期を言うのかはわかりませんけど、観測機器の安定性を確保しなければならない。大体10年で電子部品はだめになります。それからセンサー自体の経年劣化もあります。特に地球化学的なセンサーというのは難しいのではないかと考えております。Hi-netでは、例えば約10年あまりで機械を交換するようにしております。V-netでは、まだそこまでいっておりませんけれども、やはり、あるところで機械の交換ということが発生します。(6)番です。データの透明性が維持できるかというのを心配しております。偽造ということができます。これは私、若いころから、行政指導という部署にちょっと近い場所にいたものですから、やはり事業者さんがデータの偽造を出してきます。それが防止できるか、それから、それを見つけられるかということが大変な問題だと思っています。それで見たリアルタイムのデータ公開が一つは大切なことだと思います。それから、あと(7)番で品質の向上ができるかと、これからいろんな技術が進歩してきております。リアルタイムの処理技術の向上、それから、例えばマグマの本質が出ているか出ていないかというと、結局、火山灰を見て、人間が拾いに行って、人間が顕微鏡を見て処理していると。やはりこれでは、大規模カルデラが出てきたときにどこまで対応できるかという疑問があると思っております。さて、データの評価のほうをお願いします。次のスライドをお願いします。このモデル化と統計処理、基本的にリアルタイムで地震計や地殻変動のデータが入ってきたとして、そこにはいろんなノイズがあるはずなんです。気象、つまり大雨のノイズ、それから揚水などの人工ノイズ、季節変動やテクトニクス的な変動があって、そういうものを除去しないといけない。当然、大きな噴火が起こるわけですから、観測網内における例えばM7クラスの地震が発生した場合のそういうものを差っ引くということをモデル化していって、統計的な処理で評価する方法が一般的な最初の一歩かと思います。ただ、それで全てが解決できるとは思っていない。次に問題だと思っているのは、評価不能の事態に陥るのではないかと思っています。大規模噴火が1回で全て始まって終わるということならばいいと思うんですけれども、それまでに小規模・中規模の噴火が発生することによって、やはり観測点が、どうしても強靭化をしてもだめなことが発生する、もしくはデータがちゃんと評価できない場合があると。直ちに多分修理はできないだろうという点数が複数出てきた場合は、評価が困難ということになるだろうと。やはり、この時点で原子力発電所の運用停止ということを考えるべきではないかと思っております。ポチ三つ目ですが、モニタリングではありませんが、やはり過去の火山噴火史の解明というのは大切じゃないかと思っております。これは、過去の噴火史解明の継続的な努力が必要。例えば活断層調査のようなものですと、事業が非常に継続化されているように思っております。ただ、こういう大規模噴火の火山の中では、多分、事業化されていないので、こういうものをしっかり、基礎的なデータをとっていかないとだめではないかと思っております。最後のスライドです。私の懸念というのも変な話ですが、2点あります。事業主が巨大噴火モニタリングと評価システムから“異常なし”と判断したとき、我々火山学者はその判定を、これは「科学」です、すみません、「化学」ではありません、サイエンスの科学です、的に検証するだけの実力を持ち合わせているのだろうかということが1点。それから、巨大噴火に至らない兆候が繰り返し観測され、何度も“異常なし”と判断が続いたとき、本当の兆候が出てきたときに、“異常有り”と事業主ではタイミング良く発表できるのだろうかと、オオカミ少年的な「ありません、ありません」と言っていて、その後で「あります」というのがパッと言えるのかというのが、私はこの2点を、モニタリングをしても、それがちゃんと有効に役に立つかというところを心配しているということで、懸念として二つほど書かせていただきました。以上です。
○島﨑委員長代理
ありがとうございます。事前に資料をいただいてない先生のものに関しては後で公表させていただきますが、とりあえず順番が前後しますけれども、モニタリングに関連して、飛田先生から次お願いしたいと思います。
○飛田総括研究官
国土地理院では、全国に1200点のGNSS観測点、これはGPSを含む、ロシアの衛星なども含めたものをGNSSと呼んでいますけれども、そういったGNSS観測点を維持して、毎日、地殻変動を監視しております。先ほどのお話にもありましたけれども、火山活動に伴って、必ず地殻変動を伴うということではないんですけれども、多くの火山活動において地殻変動が観測される場合もございます。ただ、GNSSを設置して、必ずそれが見えるかどうかというとそうではなくて、これは、私たちは測量のためにこれを設置して国土の変化をモニタしているんですけれども、やはり、必ず測量には誤差がありますので、それをノイズとしますと、シグナルとノイズのS/N比が1を超えないと有効な観測ではないということで、ここでは、火山監視に有効なGNSS観測とはどういうものかということをちょっとまとめてみました。こういったふうに、しっかりした観測、有効な観測ができないと、できるだけ早く、そのマグマの変化を捉えたいんですけれども、早ければ早いほどいいわけですけれども、それができないということで、まず1番ですけれども、GNSS観測点の設置場所は、局所的な変位のない安定した地盤が必要と。2番、GNSSアンテナ設置用のピラー、タワーですけれども、それの基礎の強度を十分に確保しておく必要があると。3番、これが特に重要なんですけれども、上空視界を十分に確保しておかなければいけません。4番、上空視界はしょっちゅう樹木等で侵されるので、枝払い等の定期的なメンテナンスを実施しなければいけません。5番ですね、マルチパス防止など、それから上空視界確保のために、状況が許せばGNSSアンテナは、右下に写真でREGMOSというのがあるんですけど、そういったものよりは、ピラーの上に設置したもののほうがよいということが最近よくわかってまいりました。できれば2m以上の上空視界を十分確保する必要があると。さらに6番としまして、PCV補正値が存在するGNSSアンテナを選択する必要があるということでございます。PCV補正というのは、細かくなるのであれですけれども、簡単に言うと、GPS電波が入ったときに、毎回、毎回、測位する場所というのはどうしても変わってしまうので、それを補正するようなものなんですけれども、そういったものが、PCV補正ができるものとできないもの、簡単に言うと安いものと高いものとあるんですけれども、そういったものもしっかり選択する必要があると。7番としまして、アンテナと受信機は1周波ではなくて複数周波数受信可能であると。8番目に、単なるGPSではなくてGLONASS、ロシア、それから日本の準天頂衛星、それからヨーロッパのGalileo、あるいは中国のBeiDou衛星からも有効なGNSSシグナルが出ていますので、そういったものは特に重要となってまいります。実際に毎日、GNSSのデータを見ていますと、こういった要件がしっかり満たされてないと、地殻変動かどうか、異常かどうかということの判断に迷うようなデータというのがどうしても出てきてしまいまして、そういったもので火山活動を判断するというのはとても難しくなってしまうということで、もし事業者がGNSS観測を、観測点を設置する場合には、しっかりした品質のものを設置していただいて、真に有効な観測ができるようなものとしていただかないといけないと。私たちの立場からすると、その測量の重複とかいろいろあるんですけれども、点を設置されてしまうと、その近くに後で私たちがGNSS観測点を設置しようと思っても、かえってできなくなってしまうということもありますので、どうせ造るならしっかりしたものを現場に造っていただく。実際に国土地理院は1200点あるといっても、火山監視には密度的に、空間分解能的に全く不十分です。マグマの膨張というのは、マグマに近いほんの数㎞、個人的に言うと3km、その膨張源の3kmぐらい近くにないと、なかなか有効な地殻変動というのは捉えられないんですね。ですので、1200点で、国土の面積であると本当に20km間隔ということに、平均的になってしまいますので、多くの火山をモニタするというのには全く不十分なので、こういった火山の監視モニタリングのためには、密度を上げる必要があるというのは申し上げておきたいと思います。以上です。
○島﨑委員長代理
ありがとうございました。それでは次、石渡先生、お願いできますでしょうか。
○石渡教授
今までの御発表は非常に専門的な立場からのものでありますけれども、私は火山の専門家というわけではございませんが、こういう地球科学をずっとやってきた人間としての、大学の1年生の講義のような感じになって恐縮ですが、ちょっと話をさせていただきたいと思います。火山に起因する災害ということで大きなものを並べますと、今、お話になっているものは、この噴火ということに特化しているわけですけれども、火山の災害というのは噴火だけが怖いのではありませんで、その後、火山泥流、これは降り積もった火山灰が、この間の広島のような、ああいう雨が降ると流れてきて、下のほうに物すごい被害を及ぼすと。山体崩壊、火山体が崩れることによって、これも非常に大きな被害を及ぼすと。それから津波、その崩れたものが海の中へ流れ込みますと津波を起こす、あるいは、海の中で噴火が起きると津波が起きるということがございます。噴火の予測ということに関しましては、今まで多くの御発表でありましたように、これは地質・地形の調査、それから地震の観測、地殻変動の観測、それから、先ほどありましたような地球化学的な、あるいは岩石学的な調査というようなことで、ある程度の予測はできるのではないかと思います。実際に、有珠山の2000年噴火では予知に成功して、人的被害を最小限に抑えた。ただ、これは何回かの噴火の経験があって、観測体制も充実していたということがあったのだと思います。しかし、では、必ずその予知ができるかというとそうではなくて、伊豆大島の1986年噴火、三宅島の2000年噴火、先ほどもお話がありましたが、予想外に噴火が拡大して、全島避難という事態になりました。今、巨大噴火ということが問題になっておりますが、過去1万年、氷河期より後で世界最大の噴火と言われている鬼界アカホヤ噴火、約7300年前。これは150km3以上というように教科書に書いてありますけれども、こういう噴火というのはほとんど起こったことがない、ほかに歴史時代には起きていないわけです。これに次ぐような噴火として、インドネシアのタンボラ火山というのが、1815年の噴火がございます。これに次ぐようなものはこれだけでありまして、あとはこれより大分小さくなります。これは、過去10万年間の大きな噴火を並べたものですが、これが鬼界アカホヤです。これ以後、歴史時代の噴火ということでいいますと、やっぱりこのタンボラ火山の噴火が一番大きいです。そのタンボラ火山の噴火がどんなふうな時系列をたどったかということを次に示します。これはタンボラ火山の1815年の巨大噴火の推移であります。インドネシアの東部のほうにある火山で、これがスンバワ島で、ここにタンボラ火山というのがございます。この30km離れたところにスンガルという町がございます。そもそもこの山は死火山だと思われていて、誰も噴火するとは思っていなかった。実際、地質を調べても、5,000年ぐらいは噴火がなかったそうです。それが、これは物の本によって違うんですけれども、3年前という本もあるし、1年前という本もあります。今日の石原先生の先ほどの話では2年前という数字が出てきたので、よくわからないんですけれども、数年前から小規模な噴火が始まった。1815年の4月5日にかなりの規模の噴火が始まって、それで、その5日後に大きな火柱が上がって巨大噴火が始まった。ほとんど次の日には、もう収束して、かなり静かになってきて、4月の5日から始まって10日間ぐらいで全て終わったということです。噴火がひどかったのは、ほとんどこの1日、2日ぐらいということです。ここで、ですから、この時点では巨大噴火が起きるということは誰もわからない。この時点で噴火が始まっても、これが巨大噴火になるか、これでおさまってしまうかというのは、多分わからないのではないかという感じがいたします。その後、1800年代から1900年代の初めにかけて、火口内に溶岩が流出しましたけれども、大きな噴火は今までありませんが、3年ぐらい前から、また活動活発化しているという状況だそうです。これは、先ほどの時系列をグラフで表したもので、ここが1日の範囲で、5日前から噴火が、中規模の噴火があって、このここで巨大噴火が始まって、ここからはスケールが変わるんですけれども、1日ちょっとぐらいの間で終わってしまった。これがタンボラ火山のある半島の地形図ですけれども、火砕流が広がった範囲は、大体この半径30kmぐらいの範囲だと。火山灰はこういう、これがジャワ島ですけれども、これがカリマンタンですけれども、このぐらいまで火山灰が降ったということです。これは非常にアルカリの多い、多分、水もたくさん含んでいる粗面安山岩という岩石でありまして、こういうこともあって巨大噴火につながったのではないかなという感じはいたします。それに次ぐような噴火としては、この1883年のクラカトアの噴火がございます。これは、現在の、この噴火の後でできた小さい火山、アナク・クラカトアという火山の噴火、現在も噴火は続いていますが、その様子です。この噴火も先ほどとよく似たような感じでありまして、この83年の5月から噴火が始まって、8月26日の午後になって巨大噴火になりました。次の日には、もう静かになってしまったという感じです。一番ひどかったのは、この27日の午前中ということです。その翌日には、もう全て活動は止んだということですね。これも、この巨大噴火が始まる前のこういう段階で、巨大噴火になるということが予想できるかというと、非常に難しいのではないかというふうに見られます。あと、ピナツボの噴火というのが、最近、我々の記憶にも残っている大きな噴火です。これは、規模から言うと5km3ぐらいということであまり大きな、先ほどのような巨大噴火ではないわけですけれども、これも活動が始まったのが4月でありまして、6月に巨大噴火、大きな噴火が起きたということです。このときは、この時点で、6月8日の時点で爆発的噴火を予想して避難命令を出したということがございました。これによって人的被害がかなり軽減されたのではないかというふうに思います。九州の火山、先ほどの過去1万年で最大の噴火を起こした鬼界カルデラというのがここにございます。阿多カルデラ、姶良カルデラ、加久藤カルデラ、阿蘇カルデラとずっと火山フロントに沿って並んでいるわけですけれども、火砕流が直接到達した範囲というのは、最大90kmぐらいの範囲まで到達している。ただ、もちろんこれは地形にもよりますし、ただ、これが先ほどのような時系列でこういうことが起きるとすると、なかなか普通の噴火でおさまるのか、巨大噴火になるのかということが難しいのではないかというふうに思われます。歴史時代の日本で、そのカルデラから流紋岩質の火砕流が発生した例としては、これはカルデラ噴火というわけではないとは思いますけれども、十和田火山の平安噴火というのがございます。これは、今回の津波の堆積物ですね、これは仙台空港のすぐ南のトレンチの写真なんですけれども、この一番上の白い砂が今回の、3年前の津波の砂であります。その下に、慶長の津波と思われるこの黄色っぽい砂があります。一番下に貞観の津波の、平安時代の津波の砂がございまして、その直上に白い層がございます。これがその平安噴火の十和田の火山灰なんですね。こういう噴火が東北地方でも起こっておりまして、これが、この貞観の噴火のかなり近接した、数十年後に発生しているということがございます。山体崩壊につきましては、こういう木曾の御岳山ですね、中部地方の火山ですけれども、79年に噴火したんです。このときはほとんど被害はなかったんですが、その5年後に、長野県西部地震のときに、この火山体が大きく崩壊しまして、下のほうで旅館や何かが飲み込まれて、かなりの方が亡くなりました。実は、日本で最大の火山災害というのは、皆さん御承知のように雲仙の眉山崩壊。これが、このここが崩壊した斜面でありますが、この下のほうに流れ山がたくさんございます。これが海へ流れ込んだために、対岸の熊本で1万人ぐらいの方が亡くなったということが、江戸時代の1792年にございました。「島原大変、肥後迷惑」と言われているわけですけれども、こういう山体崩壊というのがやっぱり火山では非常に怖い。これはインドネシアのクラカトアの津波ですけれども、この場合は噴火による津波ですけれども、40mぐらいの津波が周りの地域に広がっている。世界最大の津波と言われるものは、このアラスカのリツヤ湾の津波というものでございます。通常の噴火でも予知は難しいわけでして、巨大噴火の場合もなおさらであろうというふうに思われます。では、どうしたらいいかということは、私もよくわからないわけですけれども、やはり、いろいろな火山活動の種類がございますが、種類・強度と、それから距離の関係を示した基準をある程度つくって、やはり異常な現象が周りで起こったら、とにかく安全側に立って止めるというような判断をするような基準をつくることが大事ではないかというふうに思います。あと、山体崩壊ということも、そういう危険のある場所については、よく考える必要があるであろうということです。ありがとうございました。
○島﨑委員長代理
ありがとうございます。それでは、すみません、最後に中田先生のお話をお願いできますか。
○中田教授
私の話は、規制委員会から示されたところの論点について、特に紹介したい、意見を述べたいと思います。この意見については、何人かの人と相談して、こういう方向でこういう問題点があると、そういうところでまとめた話をしたいと思います。一部重複もありますけれども、その分については割愛させていただきたいと思います。まず、その論点、1、2、3とありましたけれども、その1番目、モニタリングに対するスタンスと有意な変化の捉え方について。それから二つ目が現状のモニタリング方法の適切性と精度の向上。それから、三つ目は火山学上の知見の整理という三つの論点があるわけですけれども、それについて簡単に意見を紹介します。それから、その中で重要になるのは、今、石渡先生が紹介されたのと似ていますけれども、外国の噴火の例から何を学ぶかということをお伝えします。それから、姶良カルデラで実は何がわかっているか。それから、結晶というのが、そのマグマ溜まりの中で浮かんでいるわけですけれども、先ほどの藤井先生の紹介にありましたのと同じように、今度は結晶の年代というのが、実は今はわかる時代になってきていますね。そういう結晶がマグマ溜まりの中に滞留したという時間から何が言えるかという、そういうことについても2例紹介したいと思います。一つ目ですけれども、巨大噴火に対するスタンスと捉え方ですけれども、巨大噴火の時期や規模を予測することは、現在の火山学では極めて困難、無理であるということですね。それでも評価ガイドのほうでは、その異常を見つけ、現状と変わらないかどうかを確認するということは、異常を見つけるということなんですけれども、ただ、その異常が、その「ゆらぎ」の範囲ではないか、バックグラウンドの「ゆらぎ」の範囲ではないかと。そういう判断は、実は我々はバックグラウンドについての知識を持っていないので、異常を、そんなに異常ではないんだけれども異常と思い込んでしまう、そういう危険性があります。それから、異常があっても、その噴火はしないという例が幾つもありますし、それからずっとタイムラグを置いて噴火するということもあるわけですね。そういうバックグラウンドの理論的理解というのが非常に不足しているという気がします。ここは強化する必要があるだろうと。それから、モニタリングに、先ほどから何人かの先生が紹介されましたけれども、その地球物理、地球化学的なモニタリングだけではなくて、火山の歴史と、それから物質を扱う、そういう研究をどんどん取り入れる必要があるだろうということです。三つ目は、ちょっと色を濁してありますけれども、これはここの検討チームでは扱うことではないかもしれないけれども、実は、その異常を見つけた後の、次のアクションを起こそうとすると、もうとんでもない大変なことがいろいろ絡んでくるわけですね。そういう責任の所在というのがあるので、その本当に異常を異常と私たちは言えるだろうかという気がします。そういうことをしなくていいとおっしゃれば、それは研究者としての意見は述べますけれども、それがどう、その最後に、悪く言えば悪用されるか、利用されるかということに非常に不安を覚えます。そういう意味で、本当に異常を検出するということは可能なのだろうかという気がします。異常検出に加えて、そのモニタリングの中では、要するに大規模噴火が起こるというのは、地下に大量のマグマが蓄積されているということですから、そういうその蓄積されている量を推定する技術を向上する必要がある。もし100km3以上のマグマが溜まっているということがわかった時点では、もうそこでは再稼働はないし、原子炉施設をつくるということはあり得ないのではないかと、そういうことにも挑戦していく必要があるだろうということです。二つ目の適切性と精度の向上ですけれども、これは、その特殊な火山地域だけではなくて、ほかの火山地域についても適用できる普遍的な判断基準にならないといけないだろうということです。鹿児島湾の観測網というのは、桜島がありますので、これは世界でも非常に緻密な観測網があるところです。そういうところの観測に対する基準だけではなくて、ほかのそういう観測網がないところではどうやるかということですね。その中では、先ほど棚田先生がおっしゃったような合成開口レーダーを使って判断する基準、そういうのは一様に世界中が見えるわけですから、そういうそのマニュアルでアプローチというのを開発する必要があるだろうと思います。現状では、いろいろおっしゃいましたように、そのカルデラに特化したモニタリングにはなっていないので、適切な観測網を整備する必要があるだろう。海域についてももちろんそうですし、桜島の場合は非常に広域に、大正噴火の後に沈降が進んでいますので、そういう、もっと広域な視点で見直すと、マグマ溜まりの深さというのは、実は今10kmとしていますけれども、もっと深いかもしれない。そうすると蓄積量自身の計算が狂ってくるわけですね。そういう観測網の整備と同時に、その理解というのをもっと進める必要があるだろうと思います。先ほどと同じですけど、マグマ溜まりの増減はモニタリングできるかもしれませんけど、そもそもどれぐらいたまっているのかというのはわからんわけですね。それについては、トモグラフィ、それからレシーバー関数解析、散乱解析によって、ある程度の推定ができるように、技術を開発する必要があるだろうということです。それで、重力観測の話も出ませんでしたけど、隆起したときに本当にマグマがどれぐらいたまっているのかということを、重力観測ということをモニタリングする必要があるだろうということです。モニタリングについても――モニタリングしても、何なのかという理解を進めることが重要であると思います。それで、火山学上の知見の整理というのは、今の噴火予知計画では、マグマの貫入速度が大きいと噴火規模が大きくなるというようなモデルがあるわけですね。そういうモデルがカルデラ噴火まで適用できるかどうかという、そういうスケーリング則が成り立つかどうかということをきちんと詰める必要があるだろうと思います。それから、巨大噴火の事例は少ないので、皆さんがおっしゃるようにデータを集めることが必要であると。その中で、モニタリングの結果の解釈をするためには、その火山がどういう具合に発達してきているのかという理解が重要であろうと思います。それから、結晶の滞留時間というのも、モニタリングの理解を支える――助ける必要があります。幾つか資料をお見せしますけど、これは先ほど石渡先生がお見せになったのとよく似ています。これは横軸に時間をとって、縦軸に、これはちょっと見にくいんですけど、上がピナツボ、クラカトアで、これがタンボラですかね。数カ月前から異常が見られるというのは先ほど紹介されたようで、同じで、1年前から見えるものもあります。それで、数週間前になると噴煙が実際に高く成層圏までのぼることがあって、最後にカルデラ噴火が起こるということです。そういう意味では、カルデラ噴火には必ず前兆があって――ここで見る限りですね――必ず前兆があって、直前には明らかに大きな変動が見かけ上は出ると。そういう意味で、普通の避難には間に合いますけども、ここで要求されている燃料の搬出等に間に合うだけのリードタイムは、多分、数年とか、あるいは10年という単位では、とてもこの現象は見えるものではないということですね。それで、物質科学的に見ていくと、これはタンボラとリンジャニという――リンジャニ火山も実は12世紀の噴火でVEI7というタンボラ並みに大きい噴火であったわけですけども、これは最近見つかったんですが、ここに噴出速度というのを書いています。これは10万年から噴火の時点まで書いていますけども、例えばこういう噴出レートで来たものが、1万年前から急に減少してくる。これは、減少してくるということは、逆に地下にたまるということですね。だから、これはマグマ溜まりが形成される時期を示しているように理解できます。これは爆発物だからいいですけど、下が、これがマグマの化学組成ですね。普通は60%ぐらいという、SiO2が60%ぐらいの安山岩が噴火しているんですけど、噴火に近づくにつれてマグマがだんだんケイ酸分に多くなると。特に1万年~数千年の間にマグマの組成が変わっていくということがトレースされています。このようなことをモニタリングにもきちんと反映する必要があるだろうと思います。姶良カルデラの場合もそういう研究が進められていて、これは横軸が年代で、縦軸が、これは積算噴出量ですね。それから、下がSiO2の量を示していますけど、これが3万年前の噴火で、噴出量が一気に上がっていますけど、このときにマグマの組成はSiO2の多いものになる、流紋岩になるわけですね。ただ、最初のころはやっぱり玄武岩から安山岩が出ていると。そういうサイクルが今のところ二つあって、今は三つ目のサイクルではないかということです。鹿児島の桜島の溶岩は、こういう組成なので、まだ流紋岩にはなっていないよということをこの論文では言っています。これはどう考えるかというと、これはモホロビチッチ不連続面で、地殻の底で、これが地表ですね。下から玄武岩が上がってきて、地殻を飛ばして、流紋岩マグマが出るんですけれども、初めは小さいので、流紋岩よりも玄武岩のほうがさっさと上に上がると。ところが、これがだんだん大きくなると、マグマ溜まりが大きくなると、下から上がってくる玄武岩を遮って、玄武岩の活動がとまってしまうと。これで噴出量も少なくなって、最後は大規模な噴火が起こるという、そういうイメージですね。それで、今、物質科学的にどう火山が変化するか、カルデラ火山がどう噴火するかという話をしましたけど、例えば結晶の年代からマグマ溜まりがどれくらい長生きしたかということを見ることができます。これは白頭山の噴火の噴出物の中にある結晶のジルコンという結晶ですけども、その中のウラン・トリウム放射非平衡年代というのを決めているのがあります。これはウランが改変してトリウム、あるいはラジウムになるわけですけど、そのときの改変が進むと、時間が経つと平衡状態になるんですけど、マグマが突然貫入すると、その平衡が崩れるわけですね。その崩れた平衡が、平衡に戻る時間を調べるわけです。そういう具合にして、ウラン、トリウムの場合は45万年まで遡ることができますし、次のトリウム、ラジウムでは、1万年前までの時間を読み取ることができるわけです。この白頭山の場合はVEIが6ですけど、ここにどういう手続をしたかというのが書いてありますけど、大体1万年~7000年の年代が出るわけですね。噴出物の中にそういう結晶が入っているんですから、結晶はその間生きていたと。ですけど、ジルコンというのは、実は非常に安定性の高い結晶で、低温であれば幾らでも長生きできるわけですね。実際に、ジルコンはリサイクルする可能性もあるので、9000年というのは、前の噴火の産物かもしれないと。そういう意味では、この噴火では9000年よりも若い、小さい滞留時間であったということが読み取れるわけです。そのような、今、放射非平衡を使った研究というのは非常に事例が多くて、例えば一番新しい論文では、これがアメリカから世界中の火山の結晶の滞留時間というのをとっていますけども、ここに縦軸、ちょっと見にくいんですが、この辺が1万年ですね、ここが1000年です。赤いベルトで示していますけども、大体、この辺にその年代が集中する。要するに結晶のマグマ溜まりでの滞留時間というのは数百年~数千年になるという、そういう結果が出ています。これはカルデラ噴火は含んでいませんけど、その程度のものであると。それから、この結晶がリサイクルしたということも考えると、実はマグマ溜まりでの結晶の生き長らえる時間は、これよりも短いと推定できるわけですね。そのようなことを考慮して、先ほど噴火の1万年ぐらいからだんだん噴出量が少なくなってマグマの蓄積が進むということもあわせて考えると、例えば100km3のマグマが5000年でたまったとすると、0.05km3/年ですね――というぐらいの変動があり得るかもしれない。こういうこともモニタリングの一つの考え方として導入して、異常か異常でないかという判断を進めることが重要ではないかと思います。それで、コメントですけど、二つあって、一つは学問的な課題というのは非常に大きいものがあると。一方で、そういう異常を異常と言えるかどうかという社会的課題ですね、これについては、この委員会ではないと思うので、特に強く言いませんけども、責任の所在をはっきりしないと、なかなか難しいだろうということです。仮にモニタリングで現状とガイドのほうでは、現状との違いを検出するためのモニタリングであるけれども、もし異常が見つかった場合に、その異常が何に基づいてどのような意味を持つのかという理解が、今の火山学では非常に不十分です。揺らぎなのか、本当にカルデラに向けた兆候なのか、それをどうやって言うかですね。だから、異常というのは簡単かもしれないけども、正常が何かということも実はよく理解していないということを注意する必要があるだろうと思います。それから、いずれにしても、こういう研究をそういうモニタリングに使用するとするならば、国内外を挙げて、そういうカルデラ噴火の火山学的理解を進める研究をどんどん推進する、そのための体制づくりが必要ではないかということです。モニタリングに関しては、これから出てくる新しい考え方、技術をどんどん導入して、新しいモデルを検証してモニタリングを進めるという方向が重要ではないかと思います。以上です。
○島﨑委員長代理
ありがとうございました。論点に従って議論を進めようと思いましたけれども、実際には、たくさんの御意見といいましょうか、資料を出していただきましたので、多少順番が必ずしもそのとおりにならない面もあるかと思いますが、ただいまの御発表に関する質問もあわせて、御意見等々をお伺いしたいと思います。どうぞ。
○篠原首席研究員
一つは、質問といいますか、質問とコメントなんですけど、藤井先生が出されたT.Druittの論文についてなんですが、まず1点目、質問というのは、この論文では、示されているのは、結論のところでは数km3のマグマが100年間に蓄積されたので恐らく供給率が0.05程度という話なんですが、3ページ目の図5に書かれている結論、あと、実際にこの論文での結論というのは、この2段階のミキシングモデルに基づくならば、バサルトが混ざってデイサイトができたのが100年前――100年程度の間と。その後、デイサイトとライオライトが混合したのは10年間程度の間というふうに書かれているかと思うんですけど、5km3というのはデイサイトの量であって、バサルトの量ではないとすると、そこにちょっと矛盾が生じるのではないかと。つまり、バサルトはデイサイトより少ないと思いますので、そうするとバサルトの供給率というのはもっと少ないというのがまず1点目の質問ですけど。
○藤井名誉教授
バサルトの供給率は圧倒的に少ないはずです。それについては、量についてはコメントがありません。彼らが議論しているのは、デイサイトが、このデイサイトの発生する深さについてもメンションがなくて、これが浅いところに上がってくる。流紋岩マグマは、数kmのマグマ溜まりのところまで上がってくることを称してマグマの供給率の話をしているんですね。だから、どの深さからどのくらいの速度で上がってきたというような議論は全くありません。浅いところまで上がってきて、しばらくじっとしていて、それから噴火の10年前ぐらいからミキシングが開始したのかもしれないんですけれども、その具体的なモデルについては何も彼らは述べていませんので、実際にこれだけのデータからそこまでは議論ができないというふうに思います。
○篠原首席研究員
コメントしたかったのは、まさに今、藤井先生がおっしゃったところであって、この論文では、あくまでミキシングをした時間、いつミキシングをしたか、そのときに関してマグマ量はどれくらいであったかということであって、それがどのように供給されたということは必ずしも言っていないということですので、極端なことを言うと、2層のマグマ溜まりがあって、それがオーバーターンをして混ざったと。それが例えば100年前ないしは10年前に起こったという可能性もあり得るとすると、この現象がマグマの例えば地殻変動というような形で現れるべき現象なのかどうかということも、改めて議論は必要なんじゃないかとは考えております。
○島﨑委員長代理
ありがとうございます。オーバーターンするときというのは何も起こらないのかというのは、素人にはわからないんですけど、何かが起こるかなという感じはしますけども、実際にはどういう感じで物事が起こるんですか。
○篠原首席研究員
よろしいですか。オーバーターンではないですけど、新燃岳の噴火で言うと、先ほど石原先生が地殻変動が数カ月くらい前から表れているという、ところが、新燃岳の場合、やはり噴火したマグマは混合したマグマであると。しかし、そのバサルトとマフィックなものと珪長質のものが混合したのは、噴火のわずか数日程度前でしかないという議論もあって、その数日程度前に対応するような、そういった地殻変動であるとか、そういった現象は特には見られていないというふうに今のところ認識しておりますけども、それが今回見るのと同じようなタイプの現象なのかというのは、また別ですけれども。
○島﨑委員長代理
新燃岳の例ですね。わかりました。ありがとうございました。ほかに、まだ発言されていない方が、もし何か御意見があればと思いますが、よろしいですか。いろいろ貴重な御意見をいただきまして、特に、本当にこれでできるのかという幾つかの御懸念というか、御心配も伺っていて、確かに大変難しい問題が含まれていることは事実だと思いますけれども、今日、いろいろ伺った御意見をもとにして、少し見解をまとめていきたいとは思いますが、まだほかにも御意見があるかと思いますので、まずそれを伺ってからと思いますが。どうぞ。
○藤井主任研究員
先ほど中田さんが紹介された例ですが、マグマ溜まりが100km3以上たまっていればということを言いましたけれども、100km3たまっているということを今の時点で推定する手法というのは、ほとんどないというふうに理解をしています。これは10年ぐらい前から私が予知連のほうでいろんな探査の専門家に問い合わせてきました。カルデラ噴火の場合は、例えば直前にマグマが一定量、つまり100km3以上ぐらいがなければそういうことが起こらないわけですから、それをつかまえればいいはずだと思って聞いてきたんですが、実際にマグマの量を100km3というと、面積として60~100km2の下にマグマが存在するわけで、厚さが1kmぐらいの液体が存在する。そういうものを例えば今の地震学的な手法で探査できるかというと、なかなか難しいというのが探査の専門家の意見です。新しい手法を開発するか、ものすごい量の地震計を張りめぐらして例えば反射を見つけるとか、何かそういうことをやらなくちゃいけなくて、これは今の日本の国内では現実的ではない。金額的にも、あるいは地理的な分布からいってもですね。だから、もっと別の手法が開発されるべきで、先ほど散乱を使うというようなことをおっしゃっていましたけれども、そういうことをこれから開発しないと、多分、できないというのが現実なんですね。だから、それを見つける手法があれば我々としては非常にありがたいと思いますけれども、そういうことができないので、実は昨年の5月に、内閣府のほうから広域火山災害に対する提言を出しましたが、その中で、カルデラ噴火というのは非常に危機的なものであると。これは原発だけの問題ではなくて、人間の――日本国民の安全にとっても重要な問題であるけれども、それに対する知見があまりになさ過ぎるので、早急に観測・調査・研究をする体制をつくるべきであるということを、ここにいらっしゃる石原さんもおいでになりましたけれども、その委員会の中から提言を出しました。先ほど中田さんが言われたのと全く同じですけれども、国の内外を挙げて、巨大噴火についての調査・研究を進めるべきであると。先ほどのDruittの例は、サントリーニの一つの例でありまして、ああいうものが本当にカルデラ噴火の最終段階で急速なマグマ供給があるのかどうかということを含めて、まだ我々は一例を知っているだけですから、そういうものが一般化できるのかということも含めて調査をしなければいけないと。だから、単なるモニタリングを今やればわかるというような段階ではないという、先ほどの中田さんが言われたことに私は同意をします。それから、もう一つは、地質学的なデータは非常に重要ですけれども、地質学的なデータで、ある異常現象をつかまえたときに、その500年後、あるいは100年後に何か起こると言えるかどうかという、その判定基準も必要ですね。それで、それは物理的なモニタリングに関してもそうです。ある異常現象をつかまえたときに、それが巨大噴火に至るのか、あるいは小さな規模の噴火で終わってしまうのか、あるいは噴火未遂になるのかという、こういう判断をする基準を私どもはまだ持っていないというふうに理解します。先ほど石原さんが最初に言われたこととダブりますけれども。ですから、なかなかモニタリングは厳しいという。だから、そういう意味では空振りも覚悟で、人命尊重という――防災という点からだと空振りも覚悟でということは可能だと思いますが、果たしてこういう施設の運営に対してそういうことが可能なのかどうかということは、きちんと考えるべきかなというふうに思います。
○島﨑委員長代理
その点は、規制委員会・規制庁が責任を持って対応しなければいけない点だと思っております。対応するに当たっては、やはり火山のさまざまな知見を用いるべきであって、今お話しされたことをそのまま率直に申し上げれば、現状で何か異常があったとしても、それが巨大噴火に結びつくかどうかはわからないというのが現状であるということだと思いますので、そうであれば、あくまでも巨大噴火の可能性を考えた処置を講ずることになるかと思います。何か御意見。どうぞ。
○石原名誉教授
モニタリングについてですけど、先ほど棚田さんが火山のモニタリングで水準測量というのを申し上げられましたね。私も長く水準測量を何十年かやってきたわけですけども、GPSは確かに水平方向の変位に対しては強いんですが、今は水平の変位をいわばモデルでもって全体のボリュームに隆起しているというふうに解釈しているわけですね。だから、実際の隆起量は、GPSでは、これは検知できない。先ほど中田さんがおっしゃいましたけども、1914年の桜島噴火の場合は、南九州、数百kmの範囲に水準測量では出ているわけですけどね。それはやはりGPSでは難しい。GPSの場合は、水平方向になりますと、これは何が起きるかというと、いわば地震が起きるとか、周辺のテクトニクスとかというようなことで、なかなか評価が難しいわけでありまして、GPSの上下の変動に対して1mmぐらいの精度できちっと言えればばそうですけども、先ほど飛田さんがいろいろおっしゃいましたけど、なかなかそれまでやろうとすると、相当のものが観測やらなきゃいけないということになります。ですから、GPSにあまり過剰に評価すると危ないと。それから、もう一つは、地殻変動でもそうなんですけども、マグマが深いところにたまっているんじゃないかと。現在の地殻変動で見ているのは、大きいところが主体になっていますから、せいぜい10kmまでの深さのをいわば見ているわけで、マグマがたまるとすると、つまり上限の上のところですよね、そこを見ているというふうな考え方でちょっと評価しないと、浅いところだけ――浅いところというのは言い過ぎかもしれませんけど、変形の大きいところにウエートを置いて、そこにいわばこれだけ膨らんでいるだろうというふうな、あまり単純なモデルで評価すると、これは非常に過小評価になるところがあるんじゃないかと思います。先ほどの新燃岳についても、GPSからこれだけの地殻変動があった、それに比べて出たものが多いとか、いろんな議論があったわけですね。ですから、先ほど篠原さんがおっしゃいましたけども、その間に入っていたかもしれませんね。つまり雲仙普賢岳の場合もそうなんですけども、私も1996年、噴火の前から測量していますけれども、96年から、最初の噴火の1990年、4年間は、地殻変動だけで大ざっぱに見積もりますと、年間数十万m3なんですね。ところが、水蒸気噴火が起こって、それから隆起率が急に急増する。つまり、そのときの変動の隆起率が数十万~年間3,000万m3、あるいはそれ以上のレートで増える。それが数年間続いて、あとおさまるというふうなプロセスがありましたので、噴火が始まったことによって、さらに下からのマグマが上がってきて地殻変動が起きると。そういうことも視野に入れて評価しないと具合が悪いのではないというふうに思いますので、今後、基準というのはいろいろつくられるわけですけども、その前のバックグラウンドのデータ、先ほど中田さんとか藤井さんもおっしゃいましたように、地質学的な知見も踏まえながらやっていかないと、なかなか大変ではないだろうかというふうに思います。
○島﨑委員長代理
ありがとうございました。何かこの点に関してよろしいでしょうか。飛田さん、よろしいですか。
○飛田総括研究官
先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ、GNSSのノイズレベルについて数値的なことを申し上げたいと思うんですけれども、水平については、概ね1cmの精度があります。けれども、上下については3cmぐらいの誤差がどうしてもあるということで、水準測量は、それよりもずっと高い精度を持っておりますので、上下に関してはですね。ですので、やはり火山の山体の膨張とかを捉えるということであれば、水準測量というのは非常に有効かと思います。ただ、GNSSに関しては、GPSをGNSS化することによって確実に精度を上げることができますので、時間をかければ、あるいは高品質の観測点をつくれば、3cmが1cmというふうになるという可能性は十分にあるというふうに考えております。実際のところ、その日のうちに地殻変動を捉えるということであれば、やっぱり3cmというのはどうしても避けられないんですけれども、軌道暦というものができてきて、2~3週間待っていれば、それが随分精度がよくなるということもあります。ですから、即時性を優先するのか、精度を優先するのかによって、またちょっと違った数字にはなってきます。以上です。
○島﨑委員長代理
ありがとうございます。ほかに何かございますか。ここで行っている安全研究等々で何かコメントございますか。よろしいですか。
○安池専門職
技術基盤グループ、技術基盤課の安池です。今、先生方に御指摘いただいたような点で、特にカルデラ噴火に対しては技術的な知見が少ないということは、ガイドの策定の時点から理解はしていまして、これについては、なるべく早く取りかかるということで、旧JNES時代から、カルデラ噴火だけではないですけれども、火山活動に関する知見の整備ということで安全研究のほうは進めさせていただいています。そのアプローチとしては、まずはカルデラの噴火のメカニズムみたいなものがよくわからないということなので、そういったことも含めて、そういったアプローチを今しつつあります。モニタリングで、やはりカルデラ噴火というのは非常に低頻度で、かつ有史の知見がないということですので、やはりある程度の推定あるいは推測――モデルに基づく推定をせざるを得ないということは認識しておりまして、ただ、やはりその推定をするにも知見が十分ではないというのもあります。まずは、安全研究側のほうとしては、幾つかのカルデラについてのマグマ溜まりの深さ方向の情報を地質学的な検討から捉えるというか、知見をまず整備すると。また、それに基づいて、今、ちょっと幾つか御指摘がございましたけども、そのマグマ溜まりの深さ方向の情報と地殻変動の関係についての研究を今行っている最中です。一方、先ほど中田先生のほうから御指摘がありましたが、やはり実際のマグマ溜まりがどの辺にあるのかというのを、地質学的にも見るんですけれども、やっぱり物理探査、地震トモグラフィ等も含めて、ほかの比抵抗とか、幾つかの物理探査の方法を検討して、幾つかのカルデラについて、どういう状況になっているかということは調査をしようと今しています。まだ、ちょっとそれは準備段階ですけれども、そういった準備はしております。以上です。
○島﨑委員長代理
どうぞ、石原さん。
○石原名誉教授
モニタリング技術と別の、基準づくりとは別の問題というか、より重要だと思うんですけど、私が先ほど申しましたけど、モニタリング体制、つまりモニタリングというのは何も監視だけではないですよね。活動、つまりそれをどういうふうに実際に、気象庁とかの業務としては、人の避難に対してということ。それから、原子力問題であれば、それをどんなふうに、何らか異変を感じたときにどういうふうな対応でやるか。そういうふうなモニタリング体制、構え方というのか、そういうものが、私も懸念するのは、電気事業者だけでできるのだろうか。もちろん、何らか異変があったときに、それを評価して、それぞれどういうふうな体制で評価者がいて、やるのかというのは、社内的にも必要だと思いますけども、それに対して、さっき藤井さんもおっしゃいましたけど、国としても関わらなきゃいけないところもあるんだろう思いますね。この辺しないと、何らかの異変が起きた、何らかのときにどういうアクションをとるかということは、こういうのは今、今後議論される保安規定といいますか、そういうのにも反映されるんでしょうかということですが、どういうアクションをとるのか、そこら辺がちょっと私も気になるんですが、いかがでしょうかね。
○島﨑委員長代理
規制庁側から何かお答えございますでしょうか。
○石原名誉教授
要は、例えばほかの事象について言うと、いわば地震について言いますと、東日本大震災が起こりましたけども、その前に、私も記憶はあやふやですけど、1月辺りから少し地震が増えていると。それで3月の、あれは9日でしたですか、M7.幾らかの地震が起きた。そういうときに、社内的に、各電気事業者でどういう体制をとるのか。同じようなことが、先ほどで言いますと、火山ですと、少し火山活動が活発化になったというときに、社内でどなたが、どういう組織の中で、どういうアクションなりオペレーションをするのかと、そこら辺のことまで、いわばこの規制庁の保安規定の中でいろいろ指針みたいのを示されるのかどうか、ちょっとそこら辺の確認をさせていただきたいと思います。
○櫻田部長
原子力規制庁の櫻田でございます。今日は専門的な立場からの御意見をいただきまして、ありがとうございます。御質問に対してストレートにお答えになるかどうかわかりませんが、まず、火山活動のモニタリングについては、私どもがその審査をした申請書のレベルでは、九州電力の件しかまだそこまで至っていませんけれども、九州電力の言っていることは何かというと、モニタリングについて申し上げれば、既存の観測網等による地殻変動、あるいは地震活動の観測データ、それから公的機関による発表情報、こういったものを収集・分析を行って、第三者の火山専門家の助言を得た評価を定期的に行うと。それから、警戒時という状況になれば臨時で行うと、こういうことを言っていまして、モニタリングのハード的な対応であるとか、実際に自分で測定するというところまで、今の時点でどこまで彼らが考えているかというところについては、我々もまだそこまで承知していないという状況であります。それから、自然災害等が発生した場合の事業者の対応の一般的な対応については、地震であれば、もうほとんど前駆事象がないので、せいぜい警戒速報が出て、それに対してという形でありますから、あまり事前の準備というのはできないので、発生した後に直ちに参集する、あるいは必要な、震度が大きければ、あるいは地震動が大きければ、警報が鳴って、それにしたがって自動的にシャットダウンするとか、そういう――シャットダウンというのは、原子炉を停止するとか――そういうことが行われるようになっていまして、その細かなところは別にして、異常時に原子炉の停止も含めた対応が行われるということについては、保安規定というよりも、保安規定の規制、規定に従って設けられる彼らの中の社内の運用手順書でありますとか、そういう規定ドキュメントの中で規定されていくと。マニュアルの中で出てくると、こういうような形になっています。それで、この地震の観測、あるいはモニタリングをして、これをどのように彼らの運用の中で生かしていくかということについては、私どもの理解としては、彼らの申請の中、設置許可申請書という、今、申請をしていますけども、その中に書かれてきたような方針については、当然、その保安規定の中にもそれなりに盛り込まれていくんだろうなというふうに思っていますが、そのほか、もう少し細かいところまで、一体どのくらいのレベルのところを保安規定の中に書き込むのか、あるいは、その下位にぶら下げられる、ひもづけされた彼らの社内ドキュメントの中に書き込んでいくのか、この辺の整理はまだ彼らの中でもしっかりついている状態にはなっていないんじゃないかなと思っています。今後、保安規定の審査というのはこれから続いていきますので、その辺りについての考え方も聞きながら、私どもとしては、今パブコメが終わって、今その処理中でございますけれど、設置許可の審査をして、もし許可をするということになれば、そのときの条件として、申請が適用されるわけですので、その条件がしっかりとその保安規定の中でも反映されているものになっているのかどうかというところについては、申請をしっかりと審査をしていくということにしていくつもりでございます。
○島﨑委員長代理
ほかの観点から何か御意見がございますでしょうか。どうぞ。
○藤井名誉教授
先ほど、安池さんでしたけど、規制委員会のほうでいろんな調査をされているというお話でしたが、特に深さ方向のということをおっしゃったときに、実際上、物理探査の方法が難しいと今申し上げましたけれども、地質学データによって深さ方向の情報を得ようとするときに、我々が持っている、例えば地質圧力計というようなものの精度は、これはなかなか、物理探査、あるいは物理観測の精度と随分違うということを認識していただきたいんです。ほとんどの圧力計、地質圧力計というのは、1kbといいますか、100MPaの圧力程度の精度しかないんですね。これは、地殻の中の深さでいうと4kmぐらい。だから±4kmという、非常に誤差の含むものです。特殊な、例えばマグマ溜まりの中で、気体にサチュレーションしているというか、水蒸気がもう既に実態としてあるというような条件が想定できれば、それを使って圧力をもう少し、非常に精度よく決めるという手法もありますけれども、今の通常の圧力計というのは精度がよくないので、それを物理データとかみ合わせて議論をするときには、よほど慎重な議論が必要な段階であるというふうに、それは認識をしておいていただきたいというふうに思います。それから、これは先ほど中田さんが言われたことと関係しますけれども、やっぱりこの巨大カルデラ噴火みたいなものを取り扱おうとすると、これはかなり大きな体制でやらないと難しいですよ。それから、特定の機関や何かだけでやるよりは、国で、やはり大きな機構、あるいは体制をつくってやるべきで、そうでないと、非常に細かいところだけをやってしまって、全体が見通せないというようなこともあり得ますので、やはりもっと大きな体制、例えば大学や研究機関を含めたコンソーシアムをつくるとか、そういう体制のもとでやらないと、非常に専門的な細かいところだけになってしまう。極端なことを言うと、カルデラ噴火でマグマ溜まりを今物理探査できないんだったら、例えばもういっそのことボーリングをあちこちにしてしまう。ものすごいお金かかりますけれども、例えば数kmぐらいのボーリングをいっぱいやる、あるいは10kmまでのボーリングをやることを考えるとか、それぐらいのことをやる手法もあるかと思います。そのためには、これは一つの機関では絶対にできないですから、そういうことも含めて検討をしていただきたいというふうに思います。
○安池専門職
よろしいですか。今、藤井先生のおっしゃられた、その地質圧力計の話に関しては、私どもも、その辺については理解しておりまして、やはりそれなりの誤差があると。今取り組もうとしているのは、結晶学的なこと、プラス、例えばその中に、結晶の中に、例えば斜長石の中に、斑晶の中に取り込まれた水を直接分析するとか、そういった、あるいは炭酸ガスの溶解度みたいなものから、深さ方向の情報についてもう少し詳しく整理しようとはしています。ただ、いかんせん、やはりおっしゃったように誤差が当然ありますので、得られた結果というのが、その推定した値の当然幅がありますので、そこら辺の精度を上げるために、やはり物理探査のほうについても少し注力したいというふうに思っています。その圧力の情報に関しては、今のところ、カルデラにせよ、一般的に言われているのが、10km付近というのが、マグマの浮遊点という、中立点というふうに言われていますので、基本的には、その10kmよりも浅いところにいるのか、あるいはもっと深いところにいるのかというのが――深いところから来たのかということを、基本的には考えています。ただ、やはりその物理探査とか、今、これから知見を蓄積していく上で、より深いところからのマグマの噴出によってカルデラ噴火が起こるというようなメカニズムを示唆するような知見が出てきたら、やはりその辺はもう一度探査の方法等も含めて考え直さないとだめかなというふうには今考えております。
○島﨑委員長代理
今、藤井先生のほうから、コンソーシアムをつくるような非常に大規模な国としての観測研究計画が必要であるという御提言ですが、ちょっとここで、そこまでできるとは思えませんけれども、そういう御提言は伺いましたので、それはそれなりに、機会を求めるなり、ほかの諸機関と考えるなり、そういったことも考えていく必要があるかと思います。いただいた御意見の中には、ある意味時間がかかる、今後進めていくものと、それから、今の段階である程度考えられるものと、幾つかございますので、そこら辺は事務局のほうで少し整理をして、まとめさせていただきたいと思っております。ほかに何か御意見ございますでしょうか。よろしければ、事務局で何か、カルデラ噴火ではないけれどもということで、資料がありますので、御意見がなければ、その説明をさせていただきますが、よろしいでしょうか。それでは、お願いします。
○小林管理官
管理官の小林でございます。参考資料2と3でございます。これについては、カルデラというわけではないんですけど、参考で用意させていただいたのですけど、設計対応不可能な火山事象以外の火山事象としての降下火砕物の影響評価でございます。これは川内を例にして、参考資料2が、これが私どもの審査書案、それから参考資料3が、九州電力の説明資料からの抜粋でございます。特に降下火砕物による影響については、約1万3000年前の桜島薩摩噴火によるものが敷地において最も影響が大きいということで、文献調査、それからシミュレーションによる検討を行いまして、指針において考慮する降下火砕物の層厚は約15cmとしてございます。それに対する対応でございまして、参考資料の1ページの一番末尾のところにございますように、影響の選定ということで、直接的影響としては、いろんな化学的影響、腐食とか、それから磨耗、閉塞、こういったものが考えられます。それから、次の2ページ目の一番冒頭にございます間接的影響でございますけど、これについては、間接的に与える影響としまして、外部電源の喪失、それから交通の途絶、こういったものが考えられるということで選定してございます。具体的なところに参りますと、設計方針のところ、4ページ、参考資料2の4ページですけど、降下火砕物の間接的影響については、このアンダーラインを引いてございますように、燃料貯蔵タンクから燃料油貯油槽への燃料運搬については、降灰時の道路条件を想定しても除灰作業によりアクセス性を確保するということで、後ほど九州電力の説明資料のほうで検証実験の様子を添付してございます。それから、もとに戻って3ページ目でございますけど、これは直接的影響についての設計方針を羅列してございます。腐食に対しては、塗装とか耐食性を有する材料の使用等により影響を及ぼさないように設計するとか、こういったことを事業者のほうは設計方針としてございます。これについては、規制委員会としても、こういった中で踏まえていることを確認したとしてございます。参考資料3のほうでございますけど、これについては、代表的なものですと、手書きで9ページと書いてあるところ、これに一覧をまとめてございます。降下火砕物が設備に影響を与える可能性のある因子として、この手書きの9ページ目のところに書いてございますように、例えば代表的なものでいえば、構造物への化学的腐食については影響がないことを確認するとか、それから、4番目の水循環系の閉塞については、降下火砕物の粒径によって懸念される狭隘部等への影響の評価を考慮するとか、こういったものを評価してございます。一番下のところに、絶縁低下。これは、ガス絶縁の閉塞装置を使用しておりまして、開閉装置本体には充電露出部がないということでございますけど、碍子等がございますので、それについては洗浄装置で洗浄可能であるということで、設備に影響を与える可能性は小さいとしてございます。それから、手書きの10ページ以降、11ページにかけては、これがアクセスルートにおける降下火砕物の除去作業の検証試験でございます。これについては、ホイールローダで降下火砕物の除去作業の検証試験を行ったということで、降灰厚さ15cmを想定して行っております。11ページにその様子がございます。手書きの12ページのところに結果がございます。これについては、始動走行時の健全確認として、スリップの検証として、15cmの降下火砕物を堆積させた道路上において、ホイールローダがスリップすることなく走行を開始ということを確認ということと、除去後の道路においてタンクローリ、これは燃料輸送用でございますけど、これがスリップすることなく走行できることを確認したということで、この除去作業も、この評価モデルにおいては約40分で除去できることを確認したというような実験をしてございます。検証をしてございます。これは参考でございましたけど、紹介は以上でございます。
○島﨑委員長代理
ありがとうございました。何か御質問ございますでしょうか。どうぞ。
○石原名誉教授
川内原発というのは、川内川の河口のそばですよね。大きな薩摩半島側に大量の火山灰があると、降雨とかによって、当然泥流が予想されるわけですよね。ですから、それが河口まで流れてきて、堆積というのはどうせ起こるわけですけども、そういうものが、そういうふうな泥流堆積物とかが原発の取水口とか、そこら辺に与える影響評価のようなことは、九州電力は何らかやっているんでしょうか。あるいは、そういうことは規制委員会が見ておられるかどうかということですが。
○小林管理官
管理官の小林でございます。参考資料3の1ページ目、説明はちょっと割愛させていただいたんですけど、これに全体の評価についてのまとめのフローが描いてございます。今、先生がおっしゃられたように、泥流とか、こういったものについても、この左のほうに、一応その可能性があるかどうかということをまず評価して、その中で、一番左のところでございますが、影響を及ぼす可能性がない火山事象として、今おっしゃられた火山泥流とか洪水、こういったものについては、このサイトについては影響を及ぼす可能性がないというふうに位置づけてございます。そのほかのものについては、ここに書いてございますように、例えば火山ガスとか、こういったものも含めて影響がないと、及ぼす可能性がないとしてございます。ただ、影響を及ぼす火山事象としては、降下火砕物とか、こういったものについて評価した結果、先ほど申し上げましたように、それぞれの設計に反映させております。以上でございます。
○島﨑委員長代理
取水について何か御心配があるんじゃないかと思いましたけれども、取水に関して、何かございますか。
○櫻田部長
規制庁の櫻田でございます。今、小林が申し上げた、例えば火山性土石流とか、火山泥流とか、あるいは洪水も含めてですけども、そういったようなことが発電所に影響するかどうかということを考えるときに、必ず、「止める、冷やす、閉じ込める」というのが原子力発電所の安全確保の基本でございますので、その安全確保の三つの要素、「止める、冷やす、閉じ込める」、特に冷却水の取水についても影響が及ぶかどうかというところは、影響は考慮することになってございまして、このサイトで考えなければいけない火山の活動によって、そういう安全機能に影響を及ぼすような事態に至ることは考えられないという、そういう結論になっているわけでございます。
○中田教授
今の火山灰の報告についてですけど、薩摩桜島噴火で15cmと想定して、そういう作業もされたと。工学的には多分これでいいというんでしょうけれど、ただ、その15cmも火山灰が降るというのはとんでもない話で、そこにアクセスする道路にももちろん降灰があって、作業員が住んでいる町からそこまでどうやって移動するかという、非常に深刻な問題もあるわけですね。5cm積もっただけで、もう坂道は、車は数cmでも上らないと思うんですけど、そこに降雨が絡むと、とても、その除灰作業に作業できる人を集めることができない。それから、タンクローリを動かすということは、湿潤状態でやっていますけども、雨が降っている中で果たして作業ができるかどうかという、そういう、実は単純に場面設定したこと以外のことがいろいろ複合して起こると思うので、その辺の考慮が、いつもこの原子力施設の安全を考える上で抜けているなという気がしています。だから、今どうしろというわけではないですけど、本当に15cmで生き延びると思いますかというのが、いつも疑問に思います。
○櫻田部長
規制庁の櫻田でございます。御指摘のとおり、相当15cmの降灰というのは大変な事態であるわけでありまして、私どもも、外から補給をするとか、あるいは応援が駆けつけるというときに、相当な支障になるであろうということ、あるいは敷地の中でもさまざまな対策を講じるために必要な計画があるわけですけれども、それが本当にできるのかというところについては、十分いろんなことを考えながら、実現可能性があるのかということについて審査をしてきたわけであります。基本的なところだけ申し上げると、まず、先ほど小林の説明の中にもありましたけども、この発電所の外からの応援というのは、7日間は期待をしないということを大方針という形になってございまして、外から何も人が来る、あるいは、例えば燃料の補給とかということがなかったとしても、発電所の中の必要な、さっき申し上げました、「止める、冷やす、閉じ込める」という、そういう機能に必要なことは全て賄おうという、そういう方針が示されておりまして、そこの妥当性についてはさまざま確認をしているということであります。それから、この15cmの降灰というのはどのくらいの期間にわたって続くのか――続くのかといいますか、1日で15cm降ってしまうのか、1週間続くのか、その辺は特に想定をしているわけではありませんけれども、ある種、火山活動だけの状態であれば、あるいは降雨とか積雪なんかも一応考慮した形になってございますけれども、したがって湿ったものをどけるということについての話でありますとか、建物の上に火山灰が積もって、その上に水が降ってくるとか、そういったことも考慮した上で、建物が壊れないのかとか、作業はできるのかという、そういうことについては確認をしてきているところであります。また、これは、この15cmという想定をしたということで、この想定の状態の中で機能が維持できるのかという審査をしたわけでございますけれども、実はこれを超えるような、想定された自然現象を超えるような大規模な自然災害が起きた場合にはどうなんだと、こういうようなことも、今までは考えてございませんでしたけれども、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、新しく定めた新規制基準の中では、そういったことも考慮した上で、どういう対応ができるのかということを示すように、それが妥当であるのかどうかということを審査するようにということでやってございますので、どこまで青天井で考えるのかとかということになりますけれども、相当程度この15cmの降灰を超えるような状態になったとしても、対応がもうすぐにできなくなってしまうというようなことではなくて、ある程度の必要なことはできるということになっているということについてもあわせて確認をしてきているという状況でございます。ちょっと補足で説明させていただきました。
○島﨑委員長代理
いろいろ御意見ありがとうございます。大体時間になりましたけれども、何か言い残しているのでということがありましたら、御意見を承りますが、よろしいでしょうか。(なし)
○島﨑委員長代理
それでは、どうもいろいろありがとうございました。一通り御意見をお伺いしましたので、本日の議事はこれで全て終了したということにしたいと思います。次回の会合では、本日の御意見をたくさんいただきましたので、これを整理して、基本的な考え方という形で取りまとめを行いたいと思っております。最後に、規制庁から事務連絡等がございましたらお願いします。
○事務局
原子力規制庁の田上です。本日は、長時間にわたり御議論いただきましてありがとうございました。また、配付資料及びモニター表示で不手際がございました点、お詫び申し上げます。原子力規制庁では、本日の議論を踏まえまして再度論点を整理して、次回会合で提示させていただきたいと思います。本日の資料につきましては、当方から郵送させていただきますので、そのまま机上に置いた状態で結構です。次回会合ですが、来週9月2日の火曜日、10時~12時半で予定しております。場所は、本日と同じこちらで行いたいと思います。具体的な進め方等につきましては、改めて御連絡させていただきます。原子力規制庁からは以上でございます。
○島﨑委員長代理
以上をもちまして、原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム第1回会合を閉会いたします。どうもありがとうございました。以上