2012年11月15日木曜日

平成24年11月15日(木) 第1回緊急被ばく医療に関する検討チーム

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外部有識者会合 > 緊急被ばく医療に関する検討チーム

平成24年11月15日(木)
第1回緊急被ばく医療に関する検討チーム 14時00分 ~ 16時00分

議題
  1. 原子力災害対策指針の概要について
  2. 緊急被ばく医療の協力体制について
  3. その他

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原子力規制委員会:
中村 佳代子

外部有識者:
明石 真言(独立行政法人放射線医学総合研究所理事)
鈴木 元 (学校法人国際医療福祉大学教授)
細井 義夫 (国立大学法人広島大学緊急被ばく医療推進センター副センター長)
山口 芳裕 (杏林大学医学部付属病院高度救命救急センター長)
横山 邦彦 (公立松任石川中央病院副院長、PET センター長)

原子力規制庁:
金子 修一(原子力防災課長)
中本 敦也(原子力防災課火災対策室長)
白井 充(原子力防災課専門職)
藤元 憲三(原子力防災課技術参与)
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■第1回緊急被ばく医療に関する検討チーム 14時00分 ~



【録画】第1回緊急被ばく医療に関する検討チーム


○議事録 / まとめ

○会議資料



○議事録(保管)
○中村委員
こんにちは。それでは、定刻になりましたので、緊急被ばく医療に関する検討チーム、第1回会合を開催いたします。初めに、検討チームに参加いただきます有識者の皆様を御紹介させていただきます。

私は、原子力規制委員、中村佳代子です。手前から、明石先生、鈴木先生、細井先生、山口先生、横山先生です。定例委員会のときにも御報告いたしましたように、緊急被ばく医療あるいは被ばく医療、救急医療といったことに関しまして、日本国内のみならず、国際的にも、非常に多くの経験と知識を持ってらっしゃる先生方に、特に臨床関係にも強い先生方に、今回は、有識者として御参加をお願いいたしました。

臨床の現場で働いてらっしゃるということもありまして、非常にお忙しいところを本当に有り難うございました。特に細井先生におかれましては、本日は別の御用があるというふうに伺っておりますので、途中で退席される、それにもかかわりませず、お越しいただきましたことに感謝をいたしております。

それでは、事務的なことから、まず取り仕切らせていただきます。まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○事務局(原子力防災課)
事務局でございます。お手元の資料の確認をさせていただきます。まず初めに、式次第がございます。資料は7種類ございます。まず配付資料といたしまして、資料1「緊急被ばく医療に関する検討チームについて」、1枚紙でございます。

それから資料2「原子力災害対策指針(平成24年10月31日)緊急被ばく医療関係部分」。続きまして、「緊急被ばく医療に関する検討課題」、資料3になります。こちらが3枚。

それから続けて、色のついている資料4「原子力災害時の救急医療対応の流れ(案)」、1枚紙でございます。こちらが配付資料になっています。その他に、参考資料として、参考資料1「防災基本計画」のうち第11編の原子力災害対策編を抜粋して準備させていただいております。

それから、10月31日に決定いたしました「原子力災害対策指針」、参考資料2として用意させていただきました。最後に、既に御案内いたしましたが、本日の「緊急被ばく医療に関する検討チーム 有識者」の皆様の名簿を1枚紙で準備しております。

資料は以上でございます。不足等ございませんでしょうか。有り難うございます。

○中村委員
有り難うございました。今回の資料、参考資料も含めまして、あまりかさばらないものではございますけれども、もし宜しければ、そのままお持ち帰りいただき、また参考資料に関しましては、特に防災基本計画、参考資料1にありますけれども、比較的分厚いものでございますので、机上資料としてお手元に残されて、また次回お目にかかるときに置いておきますので、そのような扱いでも問題はございません。

それでは、本検討のチームの目的に関しましては、もう既に資料1に記載しておりますので、これから、時間が非常に限られておりますところ、議事をすぐに進行させていただきたいと思っております。

今日は、そこの一番最初に書きましたように、まず(1)として原子力災害対策指針、その中の緊急被ばく医療の位置づけといったようなもの、関連事項といったようなものについて、これまでの経緯を私から御説明申し上げるとともに、その後、特に緊急被ばく医療の協力体制について御意見を伺いたいと思っております。

早速始めさせていただきます。お手元にある資料なんですけれども、資料2が、原子力災害対策指針、これは平成24年10月31日の時点で、原子力規制委員会でお認めいただいたものです。

この指針は、原子力安全委員会の中間取りまとめだけでなく、国会、政府、民間の事故調査委員会からの御指摘を踏まえて作成をしました。特に、福島の原発事故の折の医療状況、特にお医者様方の御活動を参考にし、また、それぞれで御活躍された先生方にいろんな御意見を伺いまして、そのときに、何が必要であるか、どういうところに問題があったかなどを踏まえて作っていったものです。

要点としては、やはりもちろん、被ばくを受けられた方、あるいは被ばくを恐れて避難をされた方はもちろんですが、そういうことではなく、一般の患者さん、それまで病院に入ってらっしゃった方、あるいは介護を必要とされる方、そういった方の搬送の問題。

それから、安定ヨウ素剤の配布に関する指示の出し方、あるいは受け止め方。そして、この後、今日ではなくて、数回後にお願いすると思いますが、スクリーニング、いわゆる汚染というのをどういうふうに解釈するか、あるいは汚染の程度をどういうふうに解釈するか、といったようなことを考慮して、この災害対策指針という中で、緊急被ばく医療に関係するものをまとめさせていただきました。

お手元にある資料2は、その参考資料としてあります災害対策指針の中から、特に緊急被ばく医療関連に関して言及したものを取り上げたものです。その要約といったようなものをそこに書いているのですが、例えば「第1 原子力災害」という第1章のところの(3)のところには、「原子力災害の特殊性」という項目がございまして、そこには、一般災害との連携という意味も含めて、かぎ括弧つきであります「一般災害と全く独立した防災対策を講じるのではなく、一般的な防災対策と連携して対応していく必要がある」というような文面を入れさせていただきました。

大体書きぶりとしてはそのようになっております。お時間がもしおありになりましたら、もとの原子力災害対策指針と、それから、この第1章、括弧つきのもの、第2章といったようなもので突き合わせて考えていただけると幸いでございます。

結果的にそれだけ、大体、指針のところには書かせてはいただいたのですけれども、言い訳になりますが、この指針を作る時間が非常に限られていたこともありまして、委員会の中だけでは、なかなかはっきりと決めかねるところ、あるいは、慎重に決めなければいけないと考えたものに関しましては、やはり規制委員会の主導のもと、もう一度検討をし直すという結論になりました。

結果としては、資料2の一番最後のページのところにあるのですけれども、「第6 今後、原子力規制委員会で検討を行うべき課題」ということで、ここには④となっていますが、番号が④となっておりますのは、検討を行うべき課題が他にもたくさんありまして、その中で検討を行うべき課題として、緊急被ばく医療の在り方というのも、特に、以下に書いてありますレ点のような内容のものについて、もう一度、検討委員会、あるいは検討チームで有識者の御意見を聞きなさいという、あるいは、聞くべきだという結論に達したものです。

今回は、その課題を受けまして、緊急被ばく医療の在り方というもの、これもまたお時間の関係で、誠に申しにくいのですが、可及的速やかに御検討をお願いする、特に、他にもたくさん御検討をお願いしたいことはあるのですが、特に重点的に、医療関係の連携、安定ヨウ素剤、スクリーニングといったような、大きく分けて3つぐらいの課題を早急に御検討、御意見を伺いたいと考えるに至ったわけです。

最終的には、これは緊急被ばく医療の在り方というのは、医療を受ける、「医療」という言葉をどこまで広げるかは、また御議論いただくとしても、医療を受ける人々にとって、どういう体制をあらかじめ作っておけば、いざというときに安心していただけるか。

あるいは、どういう体制をあらかじめ作って、それを防災計画に盛り込めば、住民の方々が不安をなくしていただけるかということが最終的な目的であります。それで、検討していただく課題に関しましては、今、申し上げましたように、3つの項目を立てました。

お手元にあります資料3にありますものが、大体のその大枠のものでございます。資料3にありますように、今、申し上げましたが「緊急被ばく医療協力体制」、これは、先ほどから申し上げましたように、被ばく医療を特別扱いすることなく、災害医療、救急医療の枠組みの中で、どういうふうに対応していけるかどうかということを論じていただくものです。

ページをめくっていただいて、2番目の課題は、これは必ずしも順番どおりになっているわけではないのですけれども、2番目が「人のスクリーニングの実施」。スクリーニングというよりは、被ばくをした方、被ばくをする可能性がある方、あるいは被ばくをしたと思われるような方、そういった方々の汚染検査をどういうふうに実施したらいいか、どういう方法がいいか、汚染が分ったときにどのように処置をしたらいいか、内部被ばくがどのぐらいであるか、被ばくの線量はどういうふうに評価をしたらいいか、ということを議論していただこうと思っています。

この後にあります、f.のスクリーニングレベルに関しましては、ちょうどEAL、OIL、つまり、どういう形で安定ヨウ素剤を服用していただくか、あるいは、そういう指示を出したらよろしいか、あるいは、どういう方を病院にお送りすればよろしいかといったようなことも、案件もありまして、非常に分野が多岐にわたっております。

したがいまして、これはまた別にですね、これと並行して、もうひとつ、昨日の定例委員会で、「原子力災害事前対策等に関する検討チーム」というものを起こしまして、そこで、原子力災害事前対策の在り方について、有識者から御意見をいただくことになっております。

並行して、これは進めますので、そのときには、こちらの緊急被ばく医療に関する検討項目と相前後して、いろんな形で御意見を集約できるものと思っております。同じく資料3で、3ページ目、これは「安定ヨウ素剤の予防服用」に関して、これも、今日はちょっとお時間がございませんので、次回、あるいは3回目に御意見を伺いたいと思いますが、これは甲状腺被ばくを低減させるということはもちろんでありますけれども、住民が、あるいはそこに住んでらっしゃる方、あるいはそこの病院にいらっしゃる方の不安の解消、あるいはこれを広く捉えて、消火活動とか、いろんな作業をしてくださる方々の不安を解消するため、あるいは予防的な措置として、安定ヨウ素剤をどのように取り扱ったらよいか。

安定ヨウ素剤を使う前に、いろんな形で避難の形があると思いますが、そういう形のもの、あるいは、現在は医薬品という形になっておりますので、そういった形の取り扱い。

それから、それをどういうふうに扱ったらいいかというような指示出しの公開性、あるいは具体案といったものが、検討、御意見をいただきたい案件でございます。そこのd.にあります「原子力災害対策重点区域の内容に合わせた服用の方策」といったものに関しましては、d1.、d2.、d3.にありますように、いわゆる区域として設定をし、その区域に合わせて服用させたほうがいいか、あるいは服用していただいたほうがいいか、それとも、f.にありますように、EALやOILという基準を決めて服用していただいたほうがいいかといったような案件に関しましては、先ほど申し上げましたように、別の検討チームが立ち上がっていることもありまして、そちらと意見調整をしながら、日程的には同じになりますので、相互乗り入れのような形で結論を出させていただきたいと思っております。

安定ヨウ素剤に関しましては、これだけではないのですけれども、教育とか訓練とか、あるいは周知事項といったようなことについても必要だと考えられておりますので、あえて、その御検討あるいは御意見をいただくところに、e.として「教育・訓練」という項目をつけさせていただきました。

非常に短い時間ではありますけれども、緊急被ばく医療に関する大きな検討課題、3つを御説明させていただきました。本日は、特に緊急被ばく医療に関する検討課題の中で、最初に挙げました「緊急被ばくの医療協力体制」といったものについて深く御議論をいただければというふうに思っております。

そこには項目としては挙げてはいないのですけれども、緊急被ばく医療協力体制は、そこに書いてありますように、資料3にありますように、目的は、多数の傷病者へ迅速な対応を可能とする体制を作ることです。

これは、お怪我をしている方、あるいは心理的に不安を感じてらっしゃる方、この全てを含みます。それから、もともと被ばくではなくて病気をされている方、あるいは介護を必要とされているために医療機関に入ってらっしゃる方も、全てを含んで、この方々に迅速な対応を可能とする体制を作り上げることが、この協力体制の構築につながるというふうに思っております。

具体的には、a.にあります「緊急被ばく医療と災害医療との協力関係の確立」、これはやはり、この後、a1.、a2.、a3.とありますが、おのおのの医療機関、この医療機関の中には、お医者様を派遣していただく救護所とか避難所も含むという意味で、「医療機関」と大きく、くくらせていただきました。

具体的には、救護所、避難所の医療スタッフ、それから現地対策本部に来ていただくお医者様方、それから、その周辺の病院・医院、それから緊急災害機関、そして今までのスキームの中に入っておりました初期被ばく医療機関、二次被ばく医療機関、三次被ばく医療機関といったようなもの、他にも幾つかありますけれども、大体そういったところの、それぞれの役割を、あるいはミッションとでも言うべきものを明らかにしたり、その上で、今のところの医療関係の指揮系統、それぞれの場所を、フローを流れていくときに、避難をされた方、あるいは病院に入ってらっしゃる方が、どういう形で進んで行かれれば取りこぼしがなくケアをすることができるかという指揮系統、あるいは情報を開示していく。

何か事が起こったときに、被ばく線量とか、あるいは環境の放射線量といったようなものが出てからでは間に合わないときがありますので、それを推測して、データを出していったときに、どこにデータを開示したらよろしいかといったようなこと。

これらがうまく稼働するためにどうしても必要とされるのが、日ごろの教育と訓練。教育という言い方はおこがましいので、私個人としてはあまり好きではないのですが、教育と訓練、日ごろの訓練が、この構築された協力関係の中で非常に必要だと思っております。

b.にあります「広域医療機関の協力体制の確立」、これは、先ほど申し上げました医療機関の相互ということよりも、むしろ地域的、あるいは県をまたいで、市をまたいで、町をまたいでといったような形、そういった形の広域という、地理的な意味も含めての協力体制の確立が必要だというふうに考えております。

この協力に関しましては、a.の医療行為、あるいは救護行為とはまた別に、a3.にありました教育・訓練といったものも、広域医療機関で構築していかなければならない体制だと思っております。

具体的には、人材の育成とかいったようなものも考慮しなければならない案件だと思っております。最後に、c.となっておりますのは、「準備すべき緊急被ばく医療の設備、資機材及び情報の取り扱い」です。

もちろん、医療設備それぞれに初期医療、あるいは初期被ばく、二次、三次というミッションがあって、それぞれに備えていただかなければならない医療設備とか資機材といったようなものもありますけれども、実際には、救護所や避難所といったところに置いていただくようなもの、あるいは一時的にどこかで保管していただくような機材、例えば、具体的には測定機器といったようなものもあります。

そういったものと、それから今度は、それを一時的に保管したとしても、実際に何かが起こったときに、病院や救護所、避難所に運ぶ搬送の件。そして、何度も重複いたしますが、安定ヨウ素剤だけではなく、いわゆる医薬品、非常時の場合の医薬品の搬送状況といったようなものが、医療設備、資機材などの関係で御検討、あるいは御意見をいただきたい内容です。

情報の取り扱いに関しましては、これも規制委員会の仕事のひとつではあるとは思いますが、バックアップ体制も含みまして、汚染の可能性のある領域とか、線量の推定値などの情報を、あるいはモニタリングの総括の結果、拡散予測の結果、救護所、避難所の医療班とか、搬送チームとか、受け入れ医療機関、どの病院に、どれだけ患者さんが、今搬送されて、どこが混んでいるといったようなこと。

さらには、こういった情報の開示、連絡の仕方が、どういう手段を用いたほうが適格に、しかも正確に伝わるかということも含めたものが情報の取り扱いです。実際には、非常に事細かになっておりますので、全体的に一歩、ひとつひとつ、これ、これということは、なかなか御議論、あるいは御意見をいただくことは難しいと思いましたので、資料4というのを御参考にしていただければと思います。

資料4は、非常に粗々のフローシートなんですけれども、これは、一般の住民の方だけでなく、本当はいろんな方々、怪我をされている方、入院患者の方、つまり何か事が起こる前から病院のお世話になってらっしゃる方、あるいは介護施設に入ってらっしゃるような方、それから、実際には原子力災害で影響を受けた地域で救急活動をされている方、社会インフラの整備等に、仕事に関わってらっしゃる方、いわゆる職業人といったような方。

それから、全てこのことが一応一段落した後にでも、御心配の方、あるいはケアをする方、いろいろな方を含めての一応の人の流れといいますか、救急の対応の流れをおおざっぱに書かせていただきました。

基本的には、ここの中には、自力で、まずは移動できる方。災害医療を基本として、そこに放射線関係、被ばく関係といったような知識を横から支援するというようなことになっております。

大体、全体的な説明といたしましては、そこに番号が振ってありますので、ちょっとそのまま説明をさせていただきますと、例えば、一番最初に「プレトリアージ*1」と書いてありますのは、少なくともそこに、避難指示を受けて避難してきた方と、その他の方、御自分で、自力でそこに入ってこられた方とを、まず分けて、避難指示を受けてきた方、そうでない方は、矢印が「その他の人達」というふうになっています。

図としては、遠回りのような形になっていますけれども、これは図の書き方でたまたま遠回りになっているだけで、すぐ横に、例えば、避難してきた方、自分で歩いてこられた方は、すぐ隣の施設というような感覚でもよろしいかと思います。

そこで、少なくとも分けていただいて、「登録*2」というところになります。これは、そこで登録をしていただくことによって、普通は病院に入っていただく、医療機関に行っていただくと、大体そこに患者シートとか、医療記録を書くのですけれども、この場合は、そういう方々ではありませんし、後々のケアのこともありますので、登録をしていただく。

「トリアージ*3」のところに行きまして、「トリアージ*3」は病気や怪我の度合いを判定して、治療などの緊急性を判断し、応急措置が必要な方、応急措置が必要でない方、応急措置が必要であり、さらに入院を要する方、入院は不要だけど応急措置は少なくとも必要な方といったような選別をさせていただく。

その後で、応急措置が必要で入院をされる方は、「汚染検査*5」というところ、ここでほとんど病院という、いわゆる患者さんになっていただくわけですので、ここではスクリーニングの判断基準を、また別にさせていただき、その後、その汚染の程度によっては、そのまま医療機関に搬送するか、あるいは汚染の程度が少し高いと思われるところは、被ばく医療という形で、初期、あるいは二次被ばく医療機関に搬送させていただくことになると思います。

一方、入院が不要であったり、あるいは応急措置が必要でない、あまりお怪我をなさっていない方は、次の汚染検査に進んでいただき、そこで、ここで汚染の程度を調べさせていただきます。

どのぐらいの程度だったらば、つまり、そこの「*4」あるいは「*5」という数字は、先ほど申し上げましたように、この後、別の委員会も含めて、報告あるいは検討をさせていただくと思いますが、大体、三段階ぐらいに分けさせていただき、ほとんど汚染がない方、あるいは汚染があっても、特に除染が不要な方、あるいは、汚染があって除染が非常に必要な方といったような、また区分けをさせていただく。

全く汚染の痕跡がないような方であったとしても、今後どういうようなことがあるか分らないこともあり、それは「*4」未満のところに入っていただき、もう一度、どこからいらっしゃったか、どういうような食事をとられたかといったようなことも、全て行動調査、調査という言い方はあまり好きではありませんけれども、いろいろお伺いし、一旦登録をさせていただいたほうが、今後、その方々が医学的に何か問題が起こりましたときに、あるいは御心配がありましたときにフォローアップができるという意味で、登録をさせていただきます。

特に御心配がないようであれば、そのまま、お家にお帰りになる、あるいは避難所に戻られることはできますが、やはりいろいろ伺った結果、汚染の可能性があったり、何か心配があった場合には、医療機関、あるいはもう一度最初の「A」のところに戻っていただく可能性もあると思います。

一方、いろんな形で、ある程度防護の必要があって、ある程度の汚染が、いずれは考えられる場合には、ヨウ素剤の服用を、これは、そこであります「*4」以上、「*5」未満のところで、ヨウ素剤の服用を考えさせていただくこともあるかもしれませんし、それ以上に汚染があると認められた場合には、もちろんヨウ素剤だけではなく、手を洗い、除染といったような指導を、あるいは除染をしていただくことになると思います。

その除染をすれば、その後、除染して、本当に汚染が取れているかといったような検査もさせていただきますし、あるいは汚染が取れていない場合、あるいは汚染が取れていても、やはり、まだケアが必要だった場合には、もう一度行動調査といったようなフローで戻っていただくこともありますし、除染が十分でなかったような場合、特に毛髪とか靴とかいったようなところ、毛髪とか顔とかいったようなところで、やはり一定の医療機関にお入りになっていただく、診ていただいたほうがよろしいような場合には、二次被ばく医療機関といったようなところに搬送させていただいたほうがよろしいのではないかというふうに考えました。

結果的には、これは、三次被ばく医療機関というのが、そこに書いてありますけれども、今の規定では、三次被ばく医療機関というのは、非常に高度に汚染されている方、汚染されて被ばく医療が必要な方を搬送する先というふうなミッションになっておりますが、福島原発事故のことを考えた場合には、特に住民の方々には、恐らく初期・二次被ばく医療機関で、十分耐えうるものではなかったかというふうには思っております。

この件に関しましては、後ほど、ここにタッチされておりまして、実際に三次被ばく医療機関であります放医研にお勤めの明石先生に御意見を伺いたいと思っているのですが、私どもとしては、一応、三次被ばく医療機関が患者さんだけで満タンになるような、そんな状態の事故が起こっては、本当にあり得ない、あっては困るわけなので、なるべくでしたら三次被ばく医療機関を、ミッションを、むしろそこにありますコンサルティング、あるいは初期・二次被ばく医療機関、あるいは別の医療機関への御指導といったような立場を保っていただきたく、三次被ばく医療機関とあわせまして、初期・二次被ばく医療機関のミッションといったようなものも、この形で御検討を願いたいと思っております。

一応、こういう形、この汚染検査とか、こういう流れは、一種の選択で、いわゆる関所みたいなように思われるかもしれませんし、こういったことが、本当に、その事態が起こったときに理路整然と行われるかどうか、一種の理想論かもしれません。

しかし、これだけのものを全て備えることによって、恐らく取りこぼしがない、全ての方々を、しかも長期にわたってケアをするということが第一の目標でございます。ですから、ちょっと、図そのものは漠然とはしていますし、それから、そこに書いてあります黄色の「医師の関与」、赤丸の「被ばく医療指示」といったような言葉に対しては、まだまだ不十分で、もう少し言葉の説明も必要かと思いますが、私どもが考えております医師の関与というのは、いわゆる医療行為、つまり、医療行為に対してライセンスを持ってらっしゃる方々にお願いする、あるいは関与していただくもので、恐らくこれだけの規模になりますと、ライセンスを持っていない者でも、いろいろな形でお手伝い、あるいは支援をお願いしなければならないこともありますので、表現としては雑駁ではありますけれども、これが災害医療、特に原子力災害の緊急医療対応の流れの最大公約的なものと考えております。

今日は、これも含めまして、それから、非常にお忙しいということもありまして、内容的に、今後の御参加のことも考えました上、明石先生に、特別に明石先生には、実は放医研で対処していただきましたことを、以前にも、放医研の先生方何人かに御意見を伺い、それはもう議事録等で公開されているのですが、改めてここで、当時お困りになったこと、問題点などを指摘していただきまして、さらに三次被ばく医療機関の放医研として何か御意見が、あるいはこういうようにしたほうがよろしいかというようなことを、御意見をいただきたいと思っております。

その御意見をいただきました後で、全体的に皆様から、時間が許す限り御意見をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。申し遅れましたが、御発言は、最初にお名前を、申し訳ございませんが、言っていただき、このボタンの「要求4」のところを押していただいて、終わりましたら「終了5」のところを押していただきますと、ハウリングがなくて済みますので、よろしくお願いいたします。

それでは、明石先生、よろしくお願いいたします。

○明石理事
放射線医学総合研究所の明石でございます。まず、私どもは、今回の事故で一番困ったというか、一番問題になったのは、やはり情報の問題です。これは、先ほど中村先生が御指摘のように、複合災害であったということがやはり大きな切り口であります。

例えば現地で、汚染があり、怪我をした人がいた。ただ、現実には、その方たちがどういう状態であるのかということを、情報がつかめない。それから、汚染のレベルがなかなか分りにくい。

そのひとつは、今までの防災の対応の中で、甲状腺の線量を評価するにしても、汚染バックグラウンドが高い地域で計らなければいけないということを多分考えてこなかった。

ですから、サーベイメーターが、バックグラウンドが高い中でどこまで正確なことが言えるかということを念頭に入れてこなかったということも、やはり現地での評価をするのに時間がかかった、評価がしにくかったという点がありました。

それから、2点目は、やはり病院、初期被ばく医療機関と言われていた病院が、避難の対象区域になっていた。医師、それから、もちろん医療スタッフ、その医療スタッフ自身が避難の対象になっていたために機能をすることができなかった。

これは恐らく複合災害でなくても同じことはあり得たのではないかというふうに、それも2つ目の問題点です。それから、もうひとつは、実際に患者の搬送が必要になったときに、現実には搬送でもめた例がありました。

何をもめたのかというと、まず受け入れる病院が見つからないという点。つまりそれは、救急にとって、受け入れ先が見つからなければ行動が起こせないという点があります。

もうひとつは、ファーストリスポンダー御自身が避難の対象になっていたという面もあります。ファーストリスポンダーについては、実はどういうことで、どういう避難の対象の案件になるのかというのは、住民であるから避難の対象であるというのもあります。

ただ、逆に、そう言ってしまうと対応ができなくなる、そこも2つ目の搬送の問題点でした。それから3つ目の問題点は、汚染のレベルに対して各機関の評価が違っていたという点があります。

例えば、県、国全体として一定の汚染レベルというのが示されていても、搬送機関、各自の病院のレベルが違っていれば、もうそれで受け入れることができなくなる。これもやはり今回の事故について、今後きちんと考えていかなければいけない問題かなというふうに思っています。

病院について、もう少し述べさせていただきますと、病院というのは、医師、看護師だけで成り立っているところではありません。それから患者さんもいるわけですから、他の患者さんもいる。

ですから患者さんを、汚染患者を受け入れるということになった場合に、もちろん医師が判断しても、看護師が、これは困る。それから、いわゆる病院の他の事務のスタッフの方が困るという問題が出てくる。

そうすると、病院全体として受け入れることができない。一方では、汚染患者さんが同じ病棟に入ったということで、中に入院している患者さんが、もし不安になるようなことがあるということが想定されると、病院としては、やはりそれも受け入れることができないという判断が最終的には出てきてしまう。

ですから、今回の事故で一番感じたのは、今まで本当に事故が起きたときにどうかということよりも、恐らく、ここさえ押さえていけばいいだろうという、そのいわゆる行間にかなり問題点があった、そこが逆に大きな障害になってしまっていたのだということですね。

ですから、ひとつは、さっきお話ししましたように、サーベイメーターで計るというのは、それはみんなが計らないと、放射線は目に見えない、味がないというのは知っています。

ところが、計ろうとしたときに、バックグラウンドが高いだけで本当に計れるのかとか、やはり本当に事故が起きたときの想定をきちんと考えないと、やるべきことができない。

今回、やるべきことができなかった点が大きな問題点かなというふうに思っています。それから、病院というよりも、住民の方々の中で、汚染の程度というのが、実はあまり、レベルが問題になったというよりも、汚染があるかないかということが、結局問題になって、ほんの少し汚染があるということと、それから大量に汚染があるということの区別が、現実にはあまりされてこなかったという点も大きな問題です。

これは、やはり教育という点もありますし、一般の方々で、こういう汚染というものを経験したことがない、こういうことをどう区別をしていくのかということも考えていかないと、せっかくレベルを作って、機械があっても、ほとんど役に立たないというのが、今回の私の感じた実感でありました。

以上、簡単に気がついたところをお話しさせていただきました。また、あと何かございましたらお話しさせていただきたいと思います。有り難うございます。

○中村委員
有り難うございました。三次医療機関の放医研というお立場ではどうでしょう。

○明石理事
我々のところは、今回の事故では、福島から二百数十km離れておりました。我々、三次被ばく医療機関というのは、今までの考えであると、逆に、初期・二次から送られてくる患者さん、それから、もしくは、先ほどの中村先生の御紹介の中でも、コンサルティングというようなところが大きな役割かなと実は思っていました。

ところが、今回は、やはりそうではなかったのですね。それは、初期・二次が、もちろん地震、それからいろいろなことで医療として機能が十分果たせなかったということの、逆にバックアップにも今度はなっていた。

それから、二百数十km離れたところにも、いろいろな住民の方、それから、中で働いている方々も、汚染検査に、2,000名以上、我々のところは受け入れていますが、そういう機能が今回は想定されていなかったというか、我々はあまり考えていなかった部分がありました。

ということは、何を考えなければいけないかというと、やはり初期・二次だけでは収まり切れない部分が恐らくあったのだろうと。そこを押さえていかなければ、今後、いけないかなと思っていますし、我々、三次被ばく医療機関ということだけで言うと、我々の機関は放射線を計る、それから計測、線量評価をする専門家がいるので、かなりの高い汚染であっても、体内に、かなりの放射性物質が入ったということが想定されても、受け入れることができた。

それは、我々、そういう専門機関であると同時に、そういう自覚を持っていた。いつか来るだろう、それから、これまでにも、1年に1回とは言いませんけれども、汚染患者を受け入れてきた実績もあるということもあって、機能できた。

ただ、それは三次被ばく医療機関の機能ということだけでは、一部は全うできたけれども、今回の全体被ばく医療の中では、我々は、もっとできることがあった。それは、先ほどお話ししましたように、抜け落ちてきた点がかなりあって、そこは、今後、考えていかなければいけないのかなと思っております。

最後に、教育という点で、やはり教育してきたと、我々が思っていたことが、実際に従事している方々の受け止め方が、我々が思っていたこととは違っていたということですね。

我々は教育してきた、それから、こんな情報を発信してきたと思ったことが、定着していなかった、誤解をされていた、不十分であったという点がかなりあった。ここは、やはり、我々、三次被ばく医療機関として大きく反省しなければいけない点かなというふうに思いました。

○中村委員
有り難うございました。今回の災害で、医療機関そのものが被災者側に回ったということで、ケアをできることが、できなかったお医者さん方がかなりいらっしゃるということは、大きな問題になっていると思います。

これは、原子力災害だけではなく、一般の災害医療としても当然あり得ることだと思っているのですけれども、山口先生、この救急活動、特に災害医療で御経験、御知見が非常に深い先生にお聞きしたいのですが、例えば、一般の、この今、医療機関をどこにどれだけ置いたらいいかということが非常に皆様も気にしてらっしゃるんですけれども、ある一定の災害が予測されるようなところには、そこは、例えば、災害が起こったときには、その病院そのものも被災で機能しなくなってしまうわけなので、そういった場合には、医療機関の配置といいますか、設置の仕方というのは、やはり一度考えたほうがよろしいのでしょうか。

○山口センター長
杏林大学の山口でございます。私は、さきの災害にあたりまして、3月18日の東京消防庁の3号機の注水作業に同行してまいりまして、その後、日本救急医学会として現地の医療体制の整備に当たりました。

それで、その経験から発言させていただきますと、今回の、このテーマでございます緊急被ばく医療ということについては、2つの側面があると思います。すなわち、緊急の被ばく医療というのが実際には存在するのかどうかということですね。

緊急に必要なのは、その段階では、恐らく救急医療、普通の救急医療の延長上にあるものでありまして、被ばくに関して緊急があるかないかということで言えば、もちろん致死的な被ばくということが危惧される事案ではございますけれども、やらなければいけなかったことは、命に関わるような被ばくが存在するのか、しないのか。

あるいは、どこの範囲まではいてもいいのか、いてはいけないのか。あるいは、医療を続けていいのか、いけないのかという判断をする。ジャッジをする。アナウンスメントをするということだと思います。

そういう意味で、この被ばく、緊急被ばくということについては、全くその責任を果たせなかったというふうに言わざるを得ないというふうに私は思います。くしくも今、京都で日本救急医学会をやっておりますけれども、そこで、現地で、その20km圏内にいらっしゃった、何百人という患者さんを抱えていた医者が、一番困ったことは何か。

つまり、そこで医療を続けていいのか、いけないのかということを、判断する材料がなかったということになります。ですから、こういうことについてきちんと判断、現場に判断を求めるのは非常に難しいです。

自分のところが、被ばくという面で、本当に危険なのかどうなのかということを判断することはできない。ですからこれは国がしなきゃいけないと思うんですね。そういう意味で、緊急被ばく医療に私が求めるのは、そのジャッジです。

アナウンスメントです。誰かが責任を持って、今はここまでは大丈夫と。あるいは、やっていていただかざるを得ないのだということを、国の責任でアナウンスしていただくということだと思います。

一方で、緊急医療という面で言いますと、例えば3月11日から、その年の年末まで、福島第一原発、第二原発の中で261名の傷病者が発生しておりますけれども、その中で、被ばく、あるいは汚染というものが危惧されたケースは3%未満でございます。

あとの圧倒的多数は外傷であり、心筋梗塞であり、熱中症であり、つまり普通の救急医療なのです。ただ、普通の救急医療ですけれども、被ばく環境の中で救急医療ができる医者がいるかと、そこが問題なんですね。

ですから、そういう意味での医療の整備というものを考える必要があると思います。ですので、私が申したい緊急被ばく医療の2つの側面ということを、ぜひ御考慮いただきたいというふうに考えるところでございます。

以上です。

○中村委員
有り難うございました。このタイトルをつけるときも、私自身もちょっと迷いまして、もともとありましたんですけれども、「緊急被ばく医療」というところが、この「緊急」がどこにかかるのか。

「緊急被ばく」なのか、「緊急医療」なのか、あるいは「被ばく医療」なのか、あれだったんですけれども、以前、救急の先生方に伺ったりして、もちろん緊急に処置をしなければならない内容というのは、被ばくをしたときにも考えられますけれども、もともとこれは、この考えは、JCOの事故が起こって、緊急に対応しなければいけないという意味合いで作られた用語のようでございます。

あるいは、テロ攻撃とか、何か非常にシビアアクシデントで、本当に被ばくをして緊急に処置をしなければいけないという案件に対してです。幸か不幸か、福島原発事故に関しましては、むしろそういうことではなく、緊急に処置をしなければいけない方と、それから一方で、長期にわたってケアをしなければいけない方の2つに分かれ、その両方とも「汚染」とか、「被ばく」という言葉に縛られていたがために、両方とも十分な活動ができなかったというのが今回の教訓であり、反省点だったと思います。

明石先生がおっしゃったように、確かに「汚染」とかいうのも、程度という問題ではなく、ゼロか1か、ゼロか、そうでないかという考え方のもとに行われていましたので、情報が行き届かなかったり、あるいは情報がうまく伝わっていなかったり、あるいは誤解されて伝わったり、混乱したことも、これに輪をかけて、被ばく医療、あるいは緊急医療を妨げたことだと思っております。

後のほうで、安定ヨウ素剤とかいったようなことでも、また御意見を伺うことになるとは思うのですが、特に放射性物質、あるいは被ばくをあえて行っているというか、それを私どもは核医学治療、あるいは内用療法というふうに呼んでおります。

具体的には、ヨード131とあえて申し上げますけれども、そういう形で甲状腺がんや、甲状腺の機能亢進の治療をすることもできます。これはまさしく被ばくではなく、これをいいほうに使っているものなんですけれども、その辺に対しても、知識の伝達、あるいは言い回しとかいったようなものが非常に重要になって、日ごろの教育が重要になってくると考えております。

そういった点で、非常に御経験があります横山先生、ちょっと、その点について御意見があればお伺いしたいのですけれど。

○横山副院長
松任中央病院の横山でございます。私どもが治療で、今ほど中村委員からおっしゃられましたように、ヨード131というアイソトープを使っております。また、さまざまなものがありまして、現在、ストロンチウム89、これは原発のときにはストロンチウム90、数字で言うと質量数がひとつだけ違うものでございますけれども、これも役に立つお薬です。

それからイットリウム90、さまざまなアイソトープが、現在、治療用に使われておりますが、薬という観点で言いますと、全てのお薬、アイソトープに限らず共通して言えることは、使い方、あるいは処方の量、服用の期間、服用の仕方、これによって薬にも毒にもなるということです。

ですから、多少、今の、この被ばくの医療の話とはずれるかもしれませんけれども、我々、常日頃やっている、その治療というものは、患者さんたちを病から救うと、そういう目的で使っているというものでございます。

以上でございます。

○中村委員
有り難うございました。治療の目的とはいえ、その治療そのものについて、御家族とか、周りの方にも御説明をして、そのことによって理解を深めていらっしゃるので、恐らく先生がいらっしゃる病院等では、そういった啓蒙も含めて、情報がかなりうまく広まっているのだと思います。

全体的に、明石先生も、それから山口先生もおっしゃいましたように、指揮系統、どこが確実な情報を出し、これという形のものをする。それによって皆さんに行動していただくということが、まず第一。

しかも、それに対しては、間違いがない、誤解のないような情報を出していかなければならないと思っております。したがいまして、そういった項目に関しましては、指針の段階で、原子力規制委員会のところで、その情報を、一番最初に集約ができるのではないかということ。

そして、原子力規制委員会のところから、今、この場所はこのぐらいの線量になっている、環境状態がこうなっているというようなこと、もちろん、私だけではなく、甲状腺の被ばくとかいったようなことがお詳しい方にも横についていただくことは条件つきではありますけれども、そういう方々を支えにして、ヨウ素剤とか、あるいはこういう作業の指示とかといったようなものの枠組み、情報網は、先ほど資料4のところでお示ししましたものとは、また別の形で、フローラインというか、これは戻りがきかない状態なんですけれども、あるいは逆に、他のところからも情報を得るという形でフィードバックはあるかもしれませんけれども、そういう形での指揮系統とは別に、情報ラインというのは作っていかなければならないかと考えております。

この緊急被ばく医療協力体制に関しまして、特に何か他に御意見があられる方はいらっしゃいますでしょうか。

○細井副センター長
私どもの広島大学も三次被ばく医療機関なのでございますが、広島大学の細井と申します。私は、国の三次被ばく医療機関の医師といたしまして、3月13日から福島のほうに派遣されておりました。

そのときに感じたことは、福島県立医大様のほうに最初伺ったのですけれども、二次被ばく医療機関であるところでも、必ずしも、被ばく患者の受け入れということに関して言うと、かなり逡巡がありました。

それはやはり、先ほど明石先生がおっしゃられたように、どういう理由かというと、教育は救急の医者ですとか、あるいは放射線科の医者にはよくされてはいたようですけれども、関係ない皮膚科の医者とか、他科の先生たちが、必ずしも放射線に関して正しい知識がない。

で、非常に恐れるということがあって、なかなか病院全体としては受け入れることが難しかったような状態も初期にありました。私、3月13日の日に、病院のスタッフ全員、ほぼ全員ですね、上のほうの人に、看護師の方も含めて、説明させていただいたのですけれども、そうすると納得していただけるというところがございました。

ですから、特に二次被ばく医療機関、あるいは初期の機関も含めて、医療スタッフ、それからコ・メディカル(co-medical)も含めて、放射線災害、あるいは放射線というものがどういうものかということを、きちんと理解していただくことが、円滑に患者を受け入れていただくということのキーではないかというふうに思いました。

以上でございます。

○中村委員
有り難うございました。鈴木先生、よろしくお願いします。

○鈴木教授
国際医療福祉大の鈴木です。「緊急被ばく医療」という言葉自身、JCO事故の後に使い出したんですが、やはり想定しているのが、非常に重症で汚染した、あるいは内部被ばくの高い患者が発生したとき、一般病院では扱えないだろうということで考えてきたわけです。

今回、もう一度、福島で振り返ってみますと、確かにそういう汚染をして、三次まで搬送して、評価をしないといけないという患者さん、少数は出たと思いますが、大部分は一般の傷病者、あるいは入院患者、入所者、こういう人たちが、汚染環境にいたために動けなくなってしまった。

要するに一般の病院として診察してもらえなくなったというのが、ひとつの問題点だったと思います。ですから、そういう意味で、「緊急被ばく医療」という言葉ではなくて、こういう放射線災害時の一般医療の在り方という形で、ひとつ押さえていって、その場合どういう教育が必要か、どういうスタッフを一般病院に派遣する必要があるか、というような整理の仕方が必要かと思います。

もうひとつ、大きく問題になったのは、これは医療というよりは、公衆衛生対応ですね。救護所とか避難所における対応、これは保健所が中心になって行う予防医学の範疇になるのですが、私たちが考えていたよりは、ずっとマス、避難者の数も多いですし、スクリーニングする数も多いですし、そういうマスという、量ということを想定した考え方というものを入れていかないといけないんじゃないかというふうに思います。

これは、また資料4のところでも触れるかと思いますが、汚染検査を始めると、もうそれだけで半日、1日潰れてしまって、それが終わってからヨウ素剤云々かんぬんというのは、現実的な対応にはならないと思うので、やはり被ばく医療というときに、非常に少数の、非常に早く後方搬送して、より特殊な治療を行う人。

それから一般傷病だけど汚染があるという方たちをどう対処するかということ。それから、住民全体としてのマスをどう扱うか。ある程度分けて対策を考えないと、全てをこの資料4のようなひとつのフォーマットで扱おうとすると、ほとんど破綻するのではないかと思います。

以上です。

○中村委員
有り難うございました。資料4は、作業ごとには分かれていますが、その作業を必ずしも1か所で行うというようなあれではなくて、その作業を行って、その対象者を考えた場合に、それぞれの地域によって、ちょっと違うと思うのですが、大体マスを考えて、大体何人ぐらい、あるいは介護を必要とされる方とかいったようなものを考えたときに、その受入機関、スタッフ等を全部考えると、大体何施設ぐらい、どのぐらいの容量のものを、どのぐらい用意しなければならないかということのひとつの目安であるとは思っております。

例えば、救護所とかいうことではなく、単なる避難所でしたらば、いわゆる、そのお医者さんについていただくとしても、学校とか、あるいは少し公民館レベルのような場所で対処できるようなものであれば、そこへスタッフを派遣することで、何らかの形でお手伝いをさせていただくようなことが構築できれば、少し混乱を避けることができるのではないかというふうに考えているわけです。

それで、もう一度、山口先生に伺いたいのですが、例えば、災害が起こった場合に、その患者を、また別のところに搬送したりするときに、それはどこどこに搬送するというのは、もちろん別の医療機関に搬送しなければいけないのでしょうけれども、それの搬送方法にもよると思うのですが、何kmぐらいのところとか、距離的なもので決めることはできるのでしょうか。

○山口センター長
従来の一般の救急医療におきましては、御存じのとおり、同じように初期、二次、三次と、重症度に応じて引き受ける医療機関が決まってございます。もともと、心筋梗塞のような非常に重症な患者さんだったら、最初から三次という、そういうことを扱える医療機関に、また、ちょっとした怪我でしたら一次医療機関にという、そういう重症度に合わせた層別化が行われています。

これは伝統的に日本の救急医療体制の中にしっかりと根づいたものでございます。しかしながら、この緊急被ばく医療の中に位置づけられている初期、二次、三次というのは、この従来の一般的な救急医療の一次、二次、三次の体制と全くリンクしておりません。

これが一番大きな問題のひとつだと私は考えます。ですので、これは、消防機関も、そういう日常走っている一次、二次、三次の中で患者さんをどういうふうに動かしていくかというのは、非常に慣れているわけですけれども、そこに突然、被ばくの場合だけは別だよというような、そういう仕組みを突然宣言しても、消防も、それに応じることは難しいですし、患者さん自体も、それに従って動くというのは、非常に難しいということを承知しなければいけないと思います。

もうひとつは、この初期、二次、三次の緊急被ばく医療の中での割り付けが、もう全く、原子力発電事業の推進を目途としたような、そういう配置になっているというところを認めざるを得ないと思うんですね。

これは、例えば、原発の立地自治体にしか、例えば、後で話題になると思いますけれども、教育とか研修とかもしてこなかった。そして、指定もしてこなかったという、そういう仕組みがあるものですから、今回なんかの場合には、そういう対象であった初期・二次医療機関が、全て動かなかった、機能できなかった、ということが起こってしまったわけです。

ですから、もっと、原発があるとかないとか、あるいはそれを推進する自治体のために貢献するとか、そこにいろいろ寄与できるようなために、そこにいろんなものを買うとか、組織立てをするということではなくて、もっと広い範囲で、もっとマクロな目で、実際に、もし起こったら、どこまでの医療機関を当てにしなくちゃいけないか、どこまで運ばなきゃいけないかという、そういう目で整備、制度設計をしていかなければいけないというふうに思います。

ですから、非常に医療者として、命を扱う医療者として、非常に残念でならないですけれども、残念ながら、これまでの被ばく医療ということに対する体制は、そういった縛りの中で整備されてきてしまったんだなということを、今回、非常に痛烈に感じざるを得ませんでした。

○中村委員
有り難うございました。(細井副センター長 退席)細井先生、お忙しいところを有り難うございました。また次回、よろしくお願いいたします。

○中村委員
ちょっと最初に触れたのですけれども、実は、この原子力災害の対策指針というのを、前の状況と、たたき台からどんどん積み上げてきたときに、かなりの変更点がありました。

それは、やはり目線を、被災者の目線から見るということを、私のほうから強調させていただきました。現実として、被災を受けた方々をどうケアしていくかという視点に立って、もう一度、原子力施設の在り方とか、あるいは防災計画を立てていただきたいということ。

もちろん、現在の福島の原発の事故の被災者のことも考慮には入れておりますけれども、被災者側から見て、あるいは被災者になった場合に、これだけのものが備えてあれば十分である、ということを考慮した形で、医療機関も含めて、あるいは医療スタッフも含めて、そういったインフラを構築したほうが、より住民の方には安心していただけるのではないか、という視点を立てました。

今、山口先生に言っていただいたことが、まさしくそうで、結果的に、医療の関係の方々が、一生懸命救おうとしてくださっているところが、普段の私どもも含めまして、教育とか、あるいは放射線関係の啓蒙が不足していたり、混乱していたがために、せっかくの活動を邪魔するような形になってしまったことに対しては、非常に申し訳なく、歯がゆい気持ちでおります。

したがいまして、こういうことをなくすためにも、医療機関と、いろんな名前で、実は今ちょっと、私も不勉強で初めて知ったのですが、救急のおっしゃっている一次、二次、三次というのがあり、被ばく医療で言っている一次、二次、三次と、多分、また別の分野でも一次、二次、三次というような形があるのだと思います。

ですから、やはり一応、何が軸になっているかということで、一次、二次、三次、人から見ると、一次、二次、三次というのが、1番目に行くのが、普通一次だと、最初は思うんですけれども、そうではなくて、例えば、被ばく医療というのは、重症は三次みたいになっているし、しかも、普通の感覚で言うと、重症だとすると、もっと遠いところにあるような感覚であるわけですから、その辺の認識も新たにしなければいけないと思います。

山口先生から御指摘がありましたように、やはり、いろんな形で医療、あるいは救助活動に携わっていただく形の指導とか、あるいは放射線関係に関しての知識の啓蒙といったようなものは必要だというふうに感じております。

それが、「緊急被ばく医療と災害医療との協力関係の確立」の中のa3.というところで述べさせていただいている教育・訓練なんですけれども、私どもが考えている教育内容、あるいは訓練内容としては、汚染、汚染といってもいろんな意味がありますが、汚染とか、被ばくとか、あるいは低線量の影響とか、放射線防護とか、安定ヨウ素剤の知識とか、あるいは簡易除染、除染の方法とかいったようなもの、こういったようなものが知識として羅列して考えたのですが、急であって申し訳ないのですが、これ以外にも何か放射線について教えておいたほうがいいような内容のものが、特にありますでしょうか。

救急活動をされる方々に。例えば、先生は、救急活動をされる方に、安定ヨウ素剤の件も説明してくださったと、前に伺ったことがあるのですが、こういったようなことも、あらかじめ救急活動に携わる前に、こういう緊急事態になる前に、もちろん知識として教えていただく、こちら側から、教育とか、いろんな知識の構築のお手伝いをしていきたいと思ってはいるのですか、そういった意味で、汚染の程度、あるいは汚染の程度の計り方、被ばくというのはどのぐらいの被ばく、あるいは低線量という、どのぐらいの具体的な数字を示して、こういうものだとやっぱり心配しなければいけない、あるいは、救急活動をするに当たって、こういったような防護をしなければいけない、あるいは、防護する必要はない、あるいは、場合によっては、除染まで救急活動の方にお願いするということは多分ないとは思うんですが、御自分に何か汚染の可能性があったときに、簡単に除染ができるような方法とか、大体そのような知識ぐらいでよろしいでしょうか。

○山口センター長
私も、JCOで患者さんを担当させていただいて、その後、やっぱりこれではいけないと。リアクツ(REAC/TS)とか、あるいは、そういう意味では明石先生とか鈴木先生は、被ばく医療については私の師匠で、それ以降、僕はその分野を勉強させていただきました。

しかしながら、今回、福島で活動するに当たっても、私の被ばくに関する勉強は、救急医学の中では、救急の医者の中では、それでも一定のことをやってきたつもりではございますけれども、大して役に立つものではありません。

これはやはり現場で、今、ここで活動していていいのかどうなのかということは、専門家が中央からアナウンスしてもらって、それを信じるしかないというふうに私は思います。

むしろ、私がやるべきことは何だったかというと、今は、このぐらいのレベルですから、どうか医療機関の方、心配しないで、この患者さんを受け入れてくださいという交渉をする。

その交渉する言葉を持つという意味において、被ばくのことをある程度勉強したことというのが、それはとても役に立ちます。ですから、決して被ばくの専門家にはなれません。

そんなつけ焼き刃でなれるような代物ではない。むしろ、そうやって患者さんをスムーズに受け入れてもらうために説得するための道具として持つ。もちろん、自分の身を守る、患者さんの身を守る、最低限の除染、そういうことについては、もちろん必要ではございますけれども、むしろそういった、いかに医療機関にスムーズに患者さんを収容していただくかというときの、言葉のツールとして、これは必須だったというふうに考えます。

○中村委員
有り難うございました。そういう感じで、医療関係者の方とか、あるいは御家族への説明とかいったようなことでも、放射性物質の取り扱いにかけても、説明とかいうことに関してもたけていらっしゃる横山先生、何か、御説明をされるときとか、あるいは医療関係者の方に説明をされるときの御苦労とか、何か問題点を感じられたことはありますか。

○横山副院長
まず、本当に基本的なことから、いつも話をすることが多いので、まず、その基本的な話をするときに、例えば、放射線と放射能の違いであるとか、あるいは外部被ばくと内部被ばくの違いであるとか、そういったようなことから話を始めなくてはいけないということがあります。

ですから、そういう点では、まさに学校教育の中のカリキュラムなんかの、放射線をどう扱っているかというところまで遡る必要があるのかもしれません。それと、もうひとつは、常日頃、感じることですけれども、やはり中途半端に知っている、私自身、それほど偉そうなことは言えませんけれども、やはり適切に怖がることと、過剰に怖がることは違いますので、そういう、誤った情報を流さないということは、非常に大事だろうといつも思います。

一度、人間の気持ちというのは、何か不安ということを思ってしまうと、それに対して、後の合理的な説明というものに対しては、もう、蓋をしてしまうようなところが、いつも感じますので、先ほど山口先生がおっしゃったように、共通のツールとしての言葉ということであれば、その言葉を理解するだけの語学力が、基礎的に必要だろうというふうなことを思います。

○中村委員
有り難うございました。もう一件ですね、これは鈴木先生、明石先生にお伺いしたいのですけれども、ちょうど資料4のところにも、ちょっと書いておいたのですけれども、汚染関係に関しまして、あるいは、このぐらい被ばくしているといったようなことについて、今現在もそうですが、その結果を報告するときに、なかなか、その報告の値そのものを、この場合には患者さんだけではなく、被ばくをしたと思われる方、あるいは少しの程度被ばくをされた方にお話をするときに、とても不安に思われる方、これはもう当然のことなんですけれども、思われることがあります。

これは、災害医療でも、多分そういうことが起こると思うのですが、その後の心のケアというものは非常に重要だというふうに思っておりまして、実際には、病気になってらっしゃる場合には、そこに直接、お医者さんなり看護師さんなりがいらっしゃいますので、その方に伺えばよろしいのですが、例えば、資料4のところにあります、最後のところに書いてあります、一応、何か特に問題は見られなかったと、もうこれでお帰りになってくださって結構ですよといったような、いわゆる、形のところであったとしても、なかなか、そのデータを信用してくれなかったり、あるいは心配してらっしゃる方には、必ず心配相談というのが、心配相談というか、不安解消といいますか、相談口が必要だと思うのです。

多分、私も経験ありますが、この3.11の事故の後も、放医研にも、いろんな形で御相談が参っているんじゃないかと思います。これは、御相談する方もそうでしょうけれども、受ける側も、非常に大変なエネルギーの要ることです。

ましてや、こういう事態が起こったときにも相談をするというのは、可及的なものであったとしても非常に大変なことなのですが、絶対的に必要なことだと思っています。したがいまして、ここには書いてありませんけれども、それぞれの場所で、救護所であろうと、避難所であろうと、周辺の医院であろうと、救急災害機関、その名前が何であろうと、どこでも心配の相談を受けるように、できるようにするのが理想的ではあるのですが、なかなか人材として確保できないのが悩みの種なので、こういった心配相談を受けることについて、あるいはそういうスタッフ、あるいはその確保、資質といったようなものについて、何かお二方から御意見を伺えると助かるのですが。

○明石理事
放医研の明石でございます。確かに中村先生、御指摘のように、我々の研究所では、かなりの相談、今でも電話相談をやっていますが、来ています。まず、我々、いわゆる世の中で専門家と言われる人間も反省しなければいけないと思っている点があります。

それは、科学的事実と言われるものを一方通行で送るということが、不安を増やして、相手を逆に心配にさせている。それから、不信感に陥らせてきたということは、私自身も、多分やってきたのだと思いますが、事実だと思います。

やはり両方向が必要。つまり、相手の方が求めているものは何なのかということを分るような説明の仕方。それから、自分の言葉も、それに応じた言葉で対応できるようにならないと、恐らく、本当に放射線の影響を理解している専門家とは言えないのではないかということを強く感じました。

そのためには、大丈夫だよということではなくて、相手の人がどういう程度で、どこまで、何を心配されているのかということを分ろうとする、やはり、ある程度専門的知識プラス、よく人間を見る力を養えないと十分な説明にはなっていかない。

そこがやはり、いわゆる専門家と言われる人たちに不十分であった点は、今後、反省をして、そこは我々も、今後、変えていかなければいけない点なのかなというふうに感じています。

○中村委員
有り難うございました。鈴木先生は、今、福島のほうでもそういったようなことで、健康管理も含めて関与してらっしゃると伺いましたけれども、そちらのお立場からも御意見をいただければと思います。

○鈴木教授
私、主に栃木のほうで活動をしています。どういう心配を持っているかというのは、人さまざまです。決して、汚染レベルとか、被ばくレベルを、非常に心配している場合もあるんですけれども、必ずしも、そのレベルが高いから心配しているとかということとは全く関係していません。

そういうことで、まずは、放射線のいろんな害の話は一定程度できるのですが、決して、そこで、ですから大丈夫でしたということを言っても、何の解決にもならないというのが現実です。

ある場合は、行政が出す、私たちの被ばくレベルというものに対する不信感ですね、そういうものがベースになっている場合もありますし、そういう場合ですと、実際に被ばくレベルを、自分で納得できるような形で、一緒に手伝って、検査してあげるということで、安心する場合もありますし、非常に千差万別です。

チェルノブイリ事故の後、ドイツに留学していた方が帰ってきて、放医研に来まして、ホールボディカウンターで測定したのです。こちらは、微量はありましたけれども、被ばくレベルは何μSvという非常に小さいレベルでしたといって、安心してくださいと言ったんですけれども、その人の受け止め方は全く逆で、「あ、私はやっぱり被ばくしていた」という、ですから、そのくらい個人によって違う。

ですから、やはり、先ほど明石先生がちょっと述べましたように、その方が何を心配しているかというのに、うまく理解してあげて、御自身の解決能力を高めてあげるという手伝いの仕方しか、本当の意味では解決できないと思っています。

なおかつ、それでもやはり納得しない人は納得しません。そこは、今、私たちの限界だと思っています。

○中村委員
有り難うございました。心配相談というのは、恐らく相談をする人を、多分信頼して、今、ちょっと鈴木先生がおっしゃいましたように、政府が出すのをあまり信頼されていない、これは、非常にそういう意味では、私どもも反省をしなければいけない内容なのですが、やはり地域に密着している方、普段から信頼を置ける、構築ができている人からの相談、あるいはコメント、サジェスチョンだったりすると、割と受け入れてくれたり、その方々の、相手方のことをよく慮って相談に乗ってくれたりするというふうに考えておりますので、このことも非常に重要な、それぞれの地域で準備していただかなければならないスタッフ、あるいは要件のひとつだというふうに考えております。

実は、どうしてそういうようなことをお伺いするかといいますと、これはやはり、この災害の対策指針ということよりは、むしろ、この指針をもとに、それぞれの地域が、それぞれの地域の特性を考えて防災計画を作っていただくための基盤とするものです。

それぞれの地域によって、年齢の構成とか人口の構成、あるいは地形的なもの、いろいろなような要素が違っています。しかし、それにもかかわらず、やはり最低限こういうようなものは備えてほしい、病院は幾つ備えてほしい、どういうところに備えてほしい、あるいはどういうミッションを持った病院を備えてほしい、あるいはその病院にはどういうような機器を、先ほど言いましたように、こういうような機器を備えてほしいとかといったような、ある程度具体的な内容まで踏み込んで指針の中に、もし書き入れることができれば、先生方の御意見を参考にして、ある程度の道筋が立てられるのではないかと思っておりますので、必須条件といったようなものを、大体書かせていただく上で、非常に参考になる御意見をいただいたと思っております。

緊急被ばく医療と災害医療との協力関係の確立ということで、今、伺ったことを総合的に見ますと、やはり、おのおのの医療機関、救護所や避難所を含んで1か所でやるというわけではなくて、山口先生がおっしゃったように、まず救急の体制としての病院が、既にもし地域で根づいているとするならば、そういった病院が、「被ばく」という言葉に遭ったとしても、十分活動ができるようにすること。

情報は一元化して、上から流れるようにし、ただし、そのときには間違いなく、適確に、きちんと、こういう状態であるということを、いわゆる被ばくの専門家が値を出し、指示を出していくこと。

指示系統をしっかりと見極めていくこと。さらに、地域を超えて、あくまでも救助活動とか、あるいは被災者の目線に立った形で、教育とか啓蒙を行っていき、さらには、そういったシステムを構築すること。

挙げ句の果てには、結果的には、それが皆さんに対して安心していただく筋道であると思いますので、そこにエネルギーをかけていただくことで、安心というものを買っていただくという考え方であるということ。

それから、いろんな意味で、放射線というのは、いろいろなところで使われていることも含めて、日ごろの教育が非常に必要で、特に最低限の基礎知識といったようなもの、私どもが、政府あるいは規制委員会として情報を一方的に流したとしても、あるいは、かなりトップダウン式で流したとしても、そのもとになる基礎的な知識がなければ理解に不足するわけですので、そういった基礎的な知識といったようなものも幾つか構築していかなければ、これにはちょっと時間がかかると思いますが、準備していかなければならない内容だと思っております。

結果的には、私どもが考えております、おのおのの医療機関、救護所や避難所を含む役割、あるいは医療関係の指揮系統、それから教育訓練の仕方、二次被ばく、この場合には、被ばく医療機関としての二次、初期被ばく医療機関、一般の病院、医院といったような役割、ミッションといったようなものを、もう一度、今日の御意見を参考にして構築させていただきたいと思っております。

他に準備すべき緊急被ばく医療設備、資機材及び情報といったようなものもあるのですが、例えば、被ばく医療機関、これは緊急という被ばくではなくて、被ばく医療機関、普通の緊急医療ということではなく、被ばく医療機関として備えておかなければいけないようなものとしては、私どもが、今、考えているのは、汚染程度や被ばく線量を測定する放射線の測定機器、それから、これは除染とか被ばく管理とか、及び汚染拡大を防止するための設備とか資機材、この中には安定ヨウ素剤も含まれますので、また後ほど御検討、御意見をいただきたいのですが、そういったようなもの以外に何か用意しておく必要があるもの。

測定機器とかいったようなものは、用意していても、きちんと管理しておかないと、いざとなったときに使えないんですよね。ですから、こういったような測定機器を用意しておいてくださいと言うのは、非常に簡単なのですが、それを管理する人間もいないと、継続的にいないと、肝心要のときに電池が切れていたりとか、精度が確かでなかったりとかいうことがあります。

ですから、測定機器の整備は、管理する人と組み合わせて考えなければいけないのですが、そういった測定機器、それから除染関係のものといったようなもの以外に、被ばく医療で必要と思われるような機材とかは、何かすぐに思い浮かびますでしょうか。

○鈴木教授
よろしいでしょうか。鈴木です。必ずしも被ばく医療でないのかもしれませんが、今回、例えば、現場で使った車両とかヘリコプターは、除染した後、そこから搬出していいかどうかという判断を求められました。

バックグラウンドが高いので、NaIシンチレーションサーベイメーターでやると、除染できているかどうかが分らないというようなことがあります。それから、同じような例で、小児甲状腺のNaIサーベイメーターによる簡易測定をやったときも、バックグラウンドが高いとうまく計れない。

いずれも、ある程度指向性を持たせたNaIサーベイメーター、別に指向性を持たせるだけの簡単な装置でいいのですが、ただし、重くなります。ですから、そういうものも、高バックグラウンドでサーベイをするときのためのものというのは考えておいたほうがいいのではないか。

それからもうひとつ、今まであまり使っていないのですけれども、ランタンブロマイドセリウムシンチレーションサーベイメーターのような、現場でスペクトルのとれる、ヨウ素131のスペクトルが計れて、それの線量率を計れるようなものというのは、今後、実際の現場でバックグラウンドが高いときに、これは放射性ヨウ素によるものなのかどうか、というものを判断していくようなことにも使えるかと思います。

今までですと、どうしても空間線量率だけで、それだけではなかなか安定ヨウ素剤を投与すべきかどうかというのは現場では判定できないわけですが、ある程度の精度を持ったスペクトルサーベイメーターがあると、その辺は改善するのではないか。

これは、今回の福島で、私、そういうサーベイ関係で、ちょっと気がついたことが2点ありましたので、発言させていただきました。

○中村委員
有り難うございます。非常に貴重な御意見で。山口先生、今のお話でちょっと気がついたのですが、救急活動をする際の車体とか、車とかいったようなものも、何か、被ばくとか除染とか何かを考えたような車体が必要でしょうか。

○山口センター長
外から応援に行くという枠組みの中では、これは、やっぱり消防機関とか警察機関とか自衛隊とか、そういう機関と行動をともにする、医療者が単独でそういうものを用意して入るというのは現実的ではありませんので、そういうことまで考えを広げるというのは、あまり現実的でないような気がいたします。

○中村委員
明石先生、何か必要資材とか。

○明石理事
放医研の明石です。ちょっと逆の方向から話をさせていただきたいと思います。資機材は物すごく重要であります。さっきから、ちょっと、この全体の項目の中で、どんなものが必要かというところで気になっていたのですが、上のa.のところに、「被ばく医療」と「災害医療」と、実は、分けて書いてあるんですね。

原子力災害とか放射線の災害も、やはり災害医療の一部だという認識で、もちろん各領域の専門家というのは必要ではあるのですけれども、やはり、分けないで、災害の中に被ばく医療も入っているんだ、被ばく医療というか、それも入っているんだという考え方がどこかにないと、いつまでたっても分けられてしまう。

放射線というのは、化学物質や、例えば、インフルエンザに比べて、測定機器が発達している分だけ、みんな目が機械に行ってしまう。実は、機械は非常に重要なんだけれども、機械でなくても判断できたり、それから円滑な医療活動ができるという場面は、実は、いっぱいあるような気がします。

ですから、機械は、もちろん機械でいい。それから、施設もあったほうがいい。ただ、そこは、そこに安心していてはいけなくて、災害医療をやる人は放射線の専門家になる必要もない。

さっき山口先生が御指摘のように、そんなのは無理です。それはいいです。だけど、ほんの少し、災害医療の中に被ばくと、それから放射線という切り口もあってもいいのかなというのはあります。

それは、前の新潟県の地震のときに、やはりDMATが現地に派遣をされたときに、災害医療学会がアンケートをとったら、何と原子力施設での事故というのを知っていたら自分たちは行かなかったという人たちが半分ぐらいいたんですね。

ですから、つまり放射性物質が、非常にごく微量ですけれども、ちょっと漏れたんですね、新潟のときに。もちろん量は、もう、今回に比べたら全く問題にならないです。でも、それは、災害医療の中に原子力とか放射線というのもあるんだということを認識しているか、していないかの差ではないかと、私は思いますので、建屋と資機材というのは必要ではありますが、それ以外の、やはりソフト、人間的な部分というのは、今回、より重要ではないかと私自身は思っています。

○山口センター長
先ほど、緊急被ばく医療の初期、二次、三次が通常の救急医療とリンクしていないということをお話ししましたけれども、今の明石先生のお話、全くそのとおりでございまして、例えば、大きな化学コンビナートがあるような地域では、それに万一のことがあった場合、広域に、どういう医療機関に搬送するかということを、県をまたいで、国のレベルで、いろいろなことを考えて、そして資機材を準備し、そして、それに最低限必要な教育を、その二次機関、三次機関含めて勉強をしているわけですね。

なぜ被ばく医療だけが特別扱いでいなきゃいけないのかというのは、私は非常に疑問に思います。これは、私は推進とか反対とか、そういうことでは全然ありませんが、現実にそこにあって、万一のことが起こるということであるならば、これは医療者としては準備をせざるを得ないという認識でいなきゃいけないと思うのです。

それについては、ですから、電力会社が、それにお金を出して教育をする義務があるとか、そういうことではなくて、国の事業として、その地域の住民を守るという視点から、そういう整備をしなきゃいけないのではないかというふうに思います。

○中村委員
有り難うございました。お配りしている資料のところは、検討していただくための項目だけを挙げております。私どもが、この指針を作り上げましたときには、いろいろな思いを含ませていただいたのですが、その中のひとつとして、今、山口先生や明石先生がおっしゃっていただいた、そのとおりの内容で、私たちの思いは、被ばく医療を特別扱いすることなく、災害医療、救急医療の枠組みの中で対応できるようにするために、具体的に何をしたらいいのかということが、私たちの思いの中に、指針づくりの中に挙げました。

それは、やはり、さっき山口先生がおっしゃったように、助ける人、助けなければいけない人、その助ける作業をしてくださる人、これはどういう災害であろうと全て同じ扱いです。

ですから、そういう形のもとで、その中で、単にそこに「被ばく」という言葉が入っていて、もちろん放射線を被ばくしたときの症状は、例えば、化学物質とか、他のものとはちょっと違った所見、特に長期にわたって、あるいは出るか出ないか分らないような病気というのもあるかもしれません。

しかし、最初の段階で行わなければならない、特に初期活動とか、初期行動といったようなものに関しては、一般の災害医療、一般の救急医療と全く変わるものがないわけでして、そこからは、もちろん私どもも含めて、関係者の中での認識そのものもそうですが、地域全体として、あるいは国全体として、その考え方、ソフトの面での構築が必要だというふうに考えております。

ただ、指針は、そういう思いは、なかなか書き切れないものですから、そういう指針が、書くに当たって、あるいは計画を作るに当たっては、そういう思いが込められているということは、十分理解をしていただきたいと思っております。

それで、緊急被ばく医療と災害医療との協力関係、こういう言い方も、実際には、これよりはむしろ、協力というよりは、その枠組みの中ですから、協力も何もないんですが、それぞれの医療機関の役割、それから医療関係の指揮系統、教育・訓練といったようなこと、それから広域に医療機関の協力体制の確立、これは、くしくも山口先生がおっしゃいました救急活動とか災害医療とかという形で捉えていけば、別に原子力施設立地県だけでなく、その周りのところの医療機関に対しても、原子力災害時に協力、あるいは原子力災害時ではなく、普通の災害時と同じように協力していただける体制を構築することができるのではないかと考えております。

その後、準備すべき医療設備とか、資機材とかいったようなものに関しては、今、具体的に鈴木先生から伺いましたように、バックグラウンドのこと、それから、いろんな設備のようなことも大体伺った限りです。

一応、予定の時間は16時までで、今日お伺いする内容は、1.と2.と3.のうち、この緊急被ばく医療協力体制ということに特化して伺ったのですが、まだ少し時間はありますので、その後の「人のスクリーニングの実施」、あるいは「安定ヨウ素剤」について、また、これは特別に設けますが、災害対策指針とかいったようなことについても、もし残った時間で御意見がありましたらば、この時間の中で十分に御議論とか、あるいは御意見を伺えればと思いますが、何かございますでしょうか。

○明石理事
放医研の明石です。スクリーニングというか、線量というか、数字の問題なのですが、やはり数字というのは世の中に出ると、大抵ひとつの数字が出てくるんですね。放射線というのは、計ってみれば、皆さんお分りのとおり、サーベイメーターだけでも揺れているわけです。

それは、機械の性質とか、その検出器にどれぐらいの信号が飛んでくるかということで計っているので、原理的にはそうなのですが、そのひとつの数字が、もう絶対であるかのような受け止められ方をされやすくなっているというのは、やはりスクリーニングのところにも、実際はそうではない、幾つかの幅を持っている数字の中でやっているのだというような考えがどこかににじみ出てくるようなスクリーニングでないと、例えば、40Bq/.が41Bq/.になると、とんでもないという、そういうものではないんだというようなこと。

例えば、体温なんかでも、37.4℃と37.5℃をすごく気にされる方もいるとは思いますけれども、放射線の場合は、測定という点から、そういうものではない。ある程度の目安だというようなことと、それからスクリーニングを決めるときに、フレキシビリティーがない、柔軟性がないというのは、やはり決め方として、今回の対応でかなり難しかったんだなと思います。

というのは、どういうことかといいますと、具体的に、私たち三次被ばく医療機関として、1年間に1回か2回は、汚染のレベルは低いですが、そういう事故があります。なぜその人たちに除染をするかというと、1人か2人だからですね。

それが100人来たら、当然、同じレベルではできない。それで、同じレベルではできないけれども、では、何で高いレベルでやめるのかというと、それは相対的にエネルギーが小さいとか、それから半減期が短いとか、体から取れやすいとか、最終的な判断は、恐らく、ここまでやらなくても健康影響は出ないだろうという判断をするわけですね。

ですから、ここで、やはり山口先生や鈴木先生、皆さんおっしゃっているとおり。医療ですから、何が影響があって、何が影響がないのかという視点を盛り込まないで、数字だけでぴたっと決める、フレキシビリティーがない数字でぴたっと全てを決めてしまうということは、ちょっと違うんじゃないかなと。

少し周りの状況、それから、いろいろなことを考えたものでスクリーニングのレベルなり評価をしていくべきではないかなと、私は、今回の事故が感じました。

○中村委員
鈴木先生、お願いします。

○鈴木教授
スクリーニングの目的というものを、ここを、内部被ばくと皮膚被ばくの低減と2つパラレルに書いているのですが、これは全く違うことを、実は同じ1行で書いてしまっているのです。

内部被ばくのほうは、例えば、皮膚の汚染とか、鼻腔汚染とかの分布を見て、その集団がどのくらい内部被ばくをしている蓋然性が高いかと、その大体の内部被ばくのレベルを推し量ろうとする。

後で、OILという形でまとまると思うのですが、そういうものだと思っているのです。ですから、この場合は、あるその集団のサンプリングで、なるべく早くその分布を想定するというものが目的になるのだろうと思うんですね。

一方、皮膚被ばくの低減というのは、個人個人の問題になります。しかもその場合は、皮膚被ばくによって障害が起きるというのが、かなり高いレベルになってきますので、これは、測定は、より精度が、例えば、NaIシンチレーションサーベイメーターで、ぱぱぱっと計っていけばいいような、比較的高いものを測定するというような測定方法になるし、これは全員にやるという形になるのだと思います。

ですから、そこを2つ、一緒に書かないで、分けておいたほうが、実際の対処はやりやすいし、また、その解釈においても、内部被ばくのレベルを、この避難住民の分布、こちらの避難住民の分布という形で押さえる上では、サンプリングでいい。

また、精度は少し高くやる必要がある。そういうふうに、ちょっと濃淡をつけた考え方を持っていったほうが実効性が上がるのではないかと思っています。

○中村委員
有り難うございました。この線量の評価というのは非常に難しい点がありまして、被ばく医療を、あるいは予防的なことを考えていくときには、もちろん体への影響とか、健康への影響を考えなければいけないのですが、例えば、救助活動をしていただくときに、その方にではなく、ここだったらば「行け」とか、ここだったら「防護して行け」とかという指示出しをするときに、やはり私は、もちろん「行け」「行くな」というだけの指示ではなく、何ベクレルでどうのという、あるいは何線量ぐらいという指示出しのときには、幅があるというような条件では、多分、指示出しはできないと思うんですね。

現場に任せるという形ではなく、この線のところからというような指示出しをしていく。つまり、値そのものは、受け取る側が、何の意味で受け取るかによって、かなり違うのですが、例えば、山口先生にお伺いしたいのですけれども、先ほど指示を出したりする、一括して規制委員会も通じて、ここだったらこういうふうにという指示出しをするときに、その参考となるデータは、もちろん、そこの環境の条件とかいったようなものだと思うのです。

それは、具体的には、どういう数字だから「行け」とかということを指示をしたほうがよろしいのでしょうか。それとも、この程度ぐらい、ここからこのぐらいの幅だから、君たちで考えて行けというほうがよろしいですか。

○山口センター長
率直に申しますと、例えば、私、オフサイトセンターで医療班として従事しておりましたときに、最初の除染レベルは100,000cpmが、13,000cpmに変わっている。

さらに、ものによっては6,000cpmであるというような話が出るわけですね。13,000cpmという数字が出たとき、では100,000cpmだったときは大丈夫なんでしょうかという、住民の方々、あるいは職員の方々の質問、疑問が、当時の国の中枢の専門的な権威のある方々に送られるわけです。

しかし、そこに明確な答えは返ってきません。その明確な答えなしにスクリーニングをやって何の意味があるのですか。このレベルだったら大丈夫だという、権威の方々が、それをお墨つきするから、そのスクリーニングに意味があるのでしょう。

この数字のスクリーニングレベルに対して安全だと、大丈夫だということを、腹を決めて権威がきちんと宣言できないのだったら意味がないです、スクリーニングなんて。その責任を果たしていないということだと思います。

ですから、今回、この規制委員会は、今度は最高権威になられるんでしょうから、是非、そういう責任から逃れないでいただきたい。そういうときにきちんと、このレベルでやるんなら大丈夫だと、腹をくくって、住民にそういうふうに言っていただきたい。

それを言えないんだったら、スクリーニングを義務づける何の根拠にもならないというふうに私は思います。

○鈴木教授
少し山口先生の誤解もあるかと思います。その前に、どういう場所だったらファートスリスポンダーが活動していいかどうかというのは、一応、IAEAなどから指針は出ています。

ただ、そこから先は、安全だとか、危険だというのではなくて、そういうゾーンに入っていく場合は、モニタリングをしながら、ある線量になったら戻ってきなさいという、そういう形の指針になっています。

それは、ですから空間線量率であったり、あるいは地表面の汚染レベルであったり、具体的な数値でゾーンが決められて、そこから先はこういう装備で、こういう注意をしながら活動しなさいという、そういうような指示になるかと思います。

山口先生の少し誤解があるかなとも思うのですが、今、言っているのが、皮膚汚染のレベルの話だと思います。確かに、当時の原子力安全委員会と福島県との間のコミュニケーションはあまりうまくいってなくて、その辺の数値に関して混乱が起きてしまったというのは、残念なことだと思っています。

最終的にはIAEAの出してきたレベルを使って、これ以下の汚染だったら除染しなくても移動していいという形で、一応,指示は出していたと思います。それがどこまで徹底したかということを、むしろ検証すべきなのだろうと思います。

ですから、決して何か出してなかったということではなかったと私は思っています。すみません。

○山口センター長
専門家とか医療者とかは、できるだけ安全にというところで、非常に低いレベルを皆さん主張されます。しかしながら、その災害のフェーズによって、あるいは状況によって、社会的な要因によって、それが達成できないというようなことも当然あるわけで、そのときには、このレベルでやらざるを得ないのだということを、それは国のレベルで国民に説明しなきゃいけないと思うのです。

ですから、それが思いのほか高いレベルであっても、今の社会状況の中では、これが目標とすべきレベルだということを、国が、国の責任で説明をすべきだという、そういう意味で、私は申しました。

決して、正しい数値を示せということではなくて、正しいというのは、科学的にということだけでなくて、社会的な要因も含めて、そのとき最大限可能な値ということで、国民に、そのことに理解を求めるような、きちんとした説明が欲しいということを申しているのです。

○明石理事
放医研の明石です。先ほど、ちょっと誤解をされたかもしれない。ちょっと言い直しますと、指示を出すときに、ひとつの数字のほうがいいというのは、私はそう思います。

私は、そういう意味で言ったのではなくて、スクリーニングのレベルを作ったときに、受け止める、いわゆる国民、その受ける側のほうが、その数字が、もういわゆる絶対値であるかのような受け止め方をするような示し方はよくないということで、誰かに、どこまでという数字を出すときに、幅を出したら混乱するのは、僕も全くそう思っていますが、受け止め方が、これをちょっとでも、10分の1でも超えたらとかいうようなものではないんだという概念は、きちんと、ここに、スクリーニングというものはこういうもので、放射線というものはこういうものでということを、きちんと書いておかないと、どうも不安の材料になって、「とある数字」を超えたことが、もう、とんでもないことになるというようなことではないというメッセージを、ここに入れてほしいと、そういう意味です。

○中村委員
数値の表示の仕方、特に被ばくという数値の表現の仕方に関しましては、この緊急被ばく医療という立場だけでなく、非常に大きなイシューであります。受け取る方々によって、その「1」が、大きい値であったり、小さい値であったりします。

やはり受け取る側のことを考えるのが、まずひとつは重要なことと、それから、何ゆえにその数値が必要かということ、何の目的でスクリーニングをするかということ、そこがはっきり見えていないために、目的がはっきりしていないがために、結果的に、その値が出てきたものだけは、放射線というのは厄介なことに、非常に感度が高いので、考えようによっては、ものすごく桁数が小さいのに大きく見せるような感じの工夫もできるようなものです。

したがって、「1,000だけしか」という言い方もできるし、「1,000も」という言い方もできるように、非常に微妙な表現なんですけれども、結果的には、やはり何のためにスクリーニングをしているのか、誰のためにスクリーニングをしているのか、その結果を誰が受け止めるのか、それから、そのデータをもって、結果的には、どういう行動を起こしてもらうのかということが構築されていないと、話しているほうもそうですし、受け取る側も混乱すると思います。

その辺は、今すぐにというわけではなく、日頃の、先ほどちょっと横山先生がおっしゃったように、いろいろなところから教育を積み重ねていかないと、一朝一夕にはいかないと思います。

ただ、指針を作るに当たっては、やはり、この値は、こういうときにはこの値を使う、こういう表現にするということは明示しなければいけませんので、明石先生、山口先生からおっしゃられたことをもとにして、実際には、先ほど申し上げましたOILとかEALとか、それぞれの地域の検討にも関わってきますので、表現も含めて、非常に慎重な形で答えを出していこうと思っております。

ちょうど時間の5分前になったのですけれども、このスクリーニングのことと、それから安定ヨウ素剤に関しては、今日、お示ししましたフローシートもそうなのですけれども、非常に一対一のところがあります。

特に、スクリーニングの結果そのものによって、安定ヨウ素剤の服用の仕方とか、配布の仕方といったようなところに、非常にクリティカルなところに触れてまいります。安定ヨウ素剤は、もちろん住民の方、避難をされる方もそうですけれども、消火活動、救急活動をされる、いわゆる職業の方々、職業人という呼び方が適切かどうか分りませんけれども、そういう方々にとっても必要な知識であり、必要なお薬でもあります。

したがって、スクリーニングと全く同じような観点で、受け止め方によっては、絶対的なものであったり、あるいは誤解を招くような表現、特に安定ヨウ素剤に関しては、それを飲まないことによって病気になるというような勘違い、あるいは、飲まなければならないことによって、飲まなかったということの罪悪感、そういったようなことも、特に問題になってくると思います。

しかも、この被ばく線量と安定ヨウ素剤に関しましては、いわゆる一般の方、今の職業の方だけでなく、特にお子さんを持ってらっしゃる方、乳幼児の対処の仕方も、今後、非常に問題になってくると思いますので、残りの2回は、うまくいけば、この2.と3.をドッキングさせた形で御討論願うかもしれませんけれども、また、別々になるかもしれませんが、総合的に討論を進めさせていただきたいと思っております。

時間が、あと2、3分ですけれども、事務局のほうから、何か今後のことで、アナウンスしておくことはありますか。

○事務局(原子力防災課)
今後のスケジュール等について、次回以降のスケジュール等については、別途調整させていただきまして、事務局のほうから御案内させていただければと思っております。

本日のところは特段ございません。

○中村委員
有り難うございました。時間、非常にお忙しいところをお集まりいただきまして、この後もかなり予定が煮詰まっていて、私どもの勝手なこともありますけれども、地域の方々が、いまや、防災対策指針をもとに計画を立てること、特に、こういった安定ヨウ素剤とか、原子力規制委員会の立てる指針を、首を長くしてというか、まだかまだかと待ってらっしゃる状況でございます。

どうぞ、その辺を御考慮いただきまして、本当にお忙しいところを申し訳ないのですが、先生方の御意見や御指導が、どうしても欠かせない状況になっておりますので、御無理をお願いいたしますけれども、また次回もよろしくお願いいたします。

第1回は、これにて閉会をさせていただきますが、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。有り難うございました。

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